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2009/11/12 00:22 |
ある灰色の空の日(後編) |
―陸南学園 運動場―
静寂すぎた運動場に雨がゆっくりと降る中、智東さんはクレトアさんが現れてからずっと驚きの表情をしながら見ていて、口をパクパクしていた。
「な・・・ん・・・で・・・?」
彼女が呟いた瞬間、から涙が出てきた。 そしたら、クレトアさんは智東さんの方に歩き始めた。
「なんで・・・あなたが・・・生きているの、クレア隊長?」
隊長? 生きている? どういうこと?っとそう思った瞬間。 パチーンっと響いた音がして、一瞬慌ててしまった。 突然、クレトアさんが智東さんの頬をはたいていた。
「・・・え?」
智東さんは何故はたかれたのが、よくわからない顔をしながら、はたかれた頬をさすった。
「・・・あの時・・・言わなかったか、シオン?」
クレトアさんは表情を変えずに言ったが、彼が相当怒っているのが肌に伝わってくるのがわかる。
「殴ったことは謝罪する。 しかし、あの時・・・言ったはずだったよね? もう・・・戦ってはいけないと・・・。 それなのに・・・君は戦っている。 しかも、戦っている相手が・・・私の味方でもある。」
彼は僕の方に顔を向けて、再び智東さんに向きなおした。
「それなのに・・・どうして戦っているのだ? ・・・君も知っているのではないのか、クオン。」
そう言ったら僕は途中、えっ?っと思った。 この場所には僕とエミ、智東さんやクレトアさんしかいないのに他にだれかいるの?
「そこにいるのは分かっている。 出てきなさい。」
クレトアさんは顔を校門の方に向き言った。 そしたら、門柱から女の子がゆっくりと出てきた。 そして僕はその女の子を見て驚いた。
「! 智東さんが・・・二人?!」
校門に立っている女の子は智東さんと瓜二つだった。 白銀の髪や顔や体型もすべて同じだった。
「クオン・・・君も知っていたのではないのか? シオンが戦っていたことを・・・。」
そのクオンっていう女の子は何も言えなかった。 クレトアさんは再び智東さんに顔を向けた。
「なんで・・・なんでたたかっているさ・・・!」
クレトアさんは怒った表情で、手を握り締めていた。
「私はあの時、君達に言った、「もう、戦わなくていい。 だから、幸せになってくれ。」って。 それなのに・・・どうして、人を殺そうとしている!」
クレトアさんの怒声が辺りに響き、彼女の肩が震いだした
「わ・・・わた・・・しは・・・。」
彼女は両手をガタガタと震えた肩を抑えながら、壊れた機械のように喋った。 そしてゆっくりとその場に膝をついた。
「私が話します。 隊長。」
すると突然、クオンという女の子が口を開き僕とクレトアさんは彼女の方に向いた。 そして、数秒後、彼女の口が開いた。
「私達は・・・あの時、隊長と別れたときこの世界に飛ばされました。」
彼女は暗くて・・・そして、どこか寂しいそうな声で言った。 そんな感じがクレトアさんは伝わったのか視線を下に向けた。
「その時の私達は・・・二月の雨の中、道路で倒れていて見知らぬ老人たちに助けてもらいました。」
「とても幸せでした。 おばあさんはやさしいし、おじいさんは素直じゃないけどいい人です。 だけど・・・やっぱり私達はみんなと一緒にいたい。 また、みんなに会いたい・・・そう思えたら急に涙が出てくるの・・・。」
それはそうだろう。 僕にはわからないけど、この二人は全く知らない世界に飛ばされて、仲間や知人もいない・・・たった二人だけでは、寂しい気持ちなるのも当然だ。
彼女が喋っている中、僕は一瞬クレトアさんに視線を向けた。 彼は顔を下に向けていてただ、黙って彼女の話を聞いていた。
「その二ヵ月後、私達が外出の時、ある黒いフードをかぶった男に出会いました・・・。」
彼女がそう言ったら、クレトアさんはピクッと体が動き、視線をクオンさんに戻した。
「その男は「君達の大切な人を生き返らせてやろう。 ただし、この男を殺したら・・・。」と言っていました。」
「私達は隊長の言葉を忘れてはいませんでした。 でも、やっぱりみんなと一緒にいたい・・・その思いが強かったのです。 だから・・・姉さんは・・・。」
「そうか・・・事情はわかったが、その男とは?」
彼がそう言ったら、クオンさんは黙って首を横にふった。
「その・・・わかりません。 顔はフードで隠されていて見なかったのです。」
「そうか・・・。」
「所で・・・なんで隊長は生きているのですか? 隊長はあの時・・・。」
「ああ・・・それは・・・。」
彼が言おうとしたら、突然クレトアさんの目の前の空間から白い大きな円が現れた。 そしたら、さっきまでそばにいたエミがいつの間にか僕の前に出て、戦闘態勢に入ったと同時に、円の中から人がと出てきた。 その人は僕と同じ年ぐらいの子で、クレトアさんと同様の全身白い服を着ていた。
「いたいた、こんな所にいたの!」
彼はふうーと息を吐いたら、小走りでクレトアさんの所に行ったら、あの円が消えていった。
「もう、びっくりしたよ! 会議の途中、顔色を変えて急に飛び出して!」
彼がそう言ったら、クレトアさんはハハッと苦笑いをした。 会議の途中ってことは彼も光の裁判官(ライト・ジャッジ)の仲間なのかな? そう思ったら、視界に驚きの表情と絶句した智東さんが見えた。 僕はクオンさんのほうも見たら、彼女も智東さんと同じ表情をしていた。
「え・・・な・・・何で・・・。」
智東さんがなにかブツブツと言いながら口を動かしている。
「何で・・・何でそいつが・・・生きているの・・・?」
彼女はゆっくりと立ち上がり、肩を震わせながらさっき円から出てきた子を指した。
「ねえ・・・クレア・・・。これって一体、どうなっているの? どうして・・・どうして、国の仇でもあるテロリスト「シグマ」のリーダーが・・・生きているのですかッ!!」
彼女は少年に指を指しながら怒声した。 今の彼女の言葉は背筋が凍るほど激しい殺意と怨念を僕は感じた。 しかし、彼は今の言葉を理解できていないかのように首を傾げた。 すると、ここでクレトアさんが口を開いた。
「・・・昔話したことあるだろう? 私には弟がいたっと。」
彼の一言で、彼女たちはハッと息を呑んだ。
「ま・・・まさか・・・。」
「そ・・・そんな・・・ありえないわ・・・。」
彼女たちは気づいたかのように声を震わせながら後ろに一歩、下がった。
「そう・・・彼が・・・かつて、私達の国を滅ぼした最大の敵でもあるテロリスト「シグマ」のリーダー・・・キリアでもある・・・だけど、そのキリアという奴は死んで本当の彼を取り戻した・・・レナウド・レード・・・正真正銘の私の弟だ。」
彼はそう言ったら、彼女達はまた一歩下がり信じれない顔をした。
「どうもこんにちは、僕は光の裁判官(ライト・ジャッジ)の第八戦闘隊「カルメス」の隊長を務めている、レナウド・レードです。」
と、彼はそう言ってぺこりと礼儀よく頭を下げた。 僕は思わず、ちいさく首を縦に振ったが、彼女たちはまだ、信じれない顔をしていて、何も言わなかった。
「あっ、そうだ、こんな事をしている暇じゃない。 兄さん、早く会議室に戻らないと! カナさん心配していましたよ。」
と、彼はクレトアさんの腕を引っ張り始めた。 すると突然、智東さんが口を開いた。
「ちょっと待って、カナさんって?」
そう智東さんが言ったら、口を開いたのはクレトアさんではなく、弟のレナウドさんだった。
「カナさんは光の裁判官の第六戦闘隊「キャノラ」の隊長で。」
そこで彼は言葉を切って。
「兄さんの奥さんでもある人だよ。」
そうレナウドさんは言ったら、彼女たちの表情が固まった。 そして、静寂が生まれた。 ポツポツと降っている雨の音しかしなくなった静寂が、数秒、数十秒、数百秒がたった。
「な・・・んでよ・・・。」
そんな静寂の中、智東さんの声がして彼女の方を見たら、いつの間にか彼女は泣いていた。 目に一杯の涙と雨の雫と共にたれていた。
「クレア・・・私があの時言った言葉・・・覚えてないの?」
彼女の涙は止まらずボロボロとこぼれながら言った。 しかし、クレトアさんは何も言わなかった。 彼はただ彼女と視線を合わせることも無く何も言わなかった。
「・・・何とか言ってみてよ、隊長!!」
「あの時、私はあなたに言った! あなたが好きだから・・・死んでも一緒にいたいって! それなのに・・・なんで・・・なんで、私の愛を裏切って他の女の人と結婚しているの!? 答えてよ! クレア!」
智東さんは肩を震えながらも辺りに響く声で彼に言った。 しかし、彼は振り向こうともしなかった。
「すまない、シオン・・・。 私には・・・愛とか好意とかそんなのよく分からなかった。 君が本気で私の事が好きであっても、私には分からなかった。 理解できなかった。 だけど、彼女と出会ってから一緒にいたら、私は愛というものに気づいた。 そして・・・私は彼女と結婚した。 そして・・・それと同時に」
と何かを言おうとしたら、どこからかシュッと鋭い音がして咄嗟に動いたのはレナウドさん。 彼は手を前に出したら深紅色の魔法陣が現れ、何かが魔法陣を通りぬけたら燃えカスになっていき魔法陣が消えたらレナウドさんは腕を下ろした。
「何者だ!?」
レナウドさんの声が辺りに響いた。 その数秒後、木陰から人が出てきた。 その人は黒いゴスロリ服をきた女性で、手にはナイフが握っていた。 その女性は、レナウドさんを睨んでいた。 いや、違う。 女性が睨んでいるのは彼の後ろ、クレトアさんだった。
「・・・。」
女性はただ、クレトアさんを睨み続けた。 数秒、数十秒、何秒過ぎたのか分からないぐらい、女性はクレトアさんを睨んだ。 そして、雨の量も増えていき、勢いも強くなっていった・・・。
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