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2009/10/21 20:21 |
悲劇の過去 |
ザザ・・・ザ・・・ザザザザ・・・
夢の中、耳からテレビのノイズのようなものが聞こえた。 俺はそれを何度も聞いて、そして見た。
「やめろ・・・。」
目の前には、俺がまだオージだった頃の光景がノイズ状態で映し出された。
「やめてくれ・・・。」
そう言ってもノイズも映像も止まらなかった。 俺は昔の自分が嫌だった。 何も守れなかった自分が何より嫌いだった。
ザザザザ・・・ザザザ・・・
「やめろ! 俺に・・・俺にこの光景を見せないでくれ!」
俺は耳を押さえつけ叫んだ。 しかし、一向に止まる気配は全くなかった。 耳を押さえてもノイズは聞こえてきた。
「・・・どこまで苦しめてくれるんだ・・・この夢は・・・!」
ザザ・・・ザ・・・
急にノイズの音が小さくなっていった。
「この・・・なま・・・だ・・・。」
ノイズの音と共に男の声が聞こえた。 俺はその声の人を知っている。 だが、俺はその声の人を見なかった。 見たくもなかった。 目を瞑りたくても瞑れなかった。
「お願いだ・・・やめて・・・くれ・・・。」
俺は泣きそうに呟いても、映像は容赦なく俺に見せる。
「おー・・・いいな・・・だな・・・。」
さっきの人と違う声が隣からした。 その人も知っていて、見たくもなかった。
「俺に・・・この人達を・・・。」
ザザザザ・・・ザザ・・・ザ・・・ザザザザザ・・・
ノイズは急に高くなって、テレビのような灰色の映像になった。 数秒後、映像が見えてきた。
「!」
そこに映っていたものは、俺が死んでも見たくもなかった悪魔の映像が・・・。
「オージ・・・血が・・・ないけど・・・たった・・・息子・・・。」
その人は頭から血を流れていて、体中から触手みたいなものが貫かれいた。 しかし、その人は顔を僕の方に向いていてなぜか笑っていた。
「やめ・・・。」
俺はこの光景は耐えれなかった。 心がズキズキする。 必死に目を瞑ろうとしても瞑れなかった。
「世界・・・を・・・頼む・・・。」
「やめろーーーーー!!!!」
俺はついに耐え切れずに叫んでしまった。 そしたら、ノイズの音が高くなっていき、映像はまた灰色になっていき、そしてテレビの電源を消すかのようにプツンと消えたと同時にノイズの音も無くなった・・・。
―桜咲宅―
「ハッ・・・!」
夢から覚めた俺は勢いよく上半身を起こした。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
息を荒く吐きながら、俺は窓の外を見た。 すでに日は昇っていて小鳥達が鳴いていた。 すると、手の甲に一滴の液体が当たった。
「・・・?」
汗かな?と思いながら額に右手を当てたが汗は特になかったが、また一滴、手の甲に落ちた。 今度は頬を当ててみたら、濡れていて手をそのまま上に動かしたら、目から涙が出ていた。
「あなた・・・。」
隣から声がして、振り向いたら淳がいて朝ごはんを作っていたのか、エプロンをしているままだった。。
「また・・・あの夢でも見ていたの?」
俺はそれを聞いてギョとして、思わず布団を強く握りだした。
「何で分かったの・・・?」
「それぐらい分かっているわよ。 何年あなたの夫をやっているの?」
「そうだな・・・。」
俺は薄く笑ったが、その笑いはすぐになくなった。
「・・・淳も知っているけど、週に一回にぐらいかな・・・あの人たちの・・・夢を見るのは・・・。」
「やっぱり・・・忘れれないの?」
それを聞いて俺はイラッと表情をした。 忘れるはずがない。
「当たり前さ・・・君はあの場所にはいないから分からないけど・・・僕はあの場所にいて・・・そして・・・血は繋がっていないけど・・・父親の最後を・・・この目で・・・見たんだから・・・。」
俺が父さん達を最後に見たのは、あの最後に出ていた映像の光景と同じであって、あの時、父さんがなぜ笑っていたのか全く分からない。 俺はそう思いながら、ベットから起きてベランダの方に歩いた。
「・・・あの世界から離れて・・・何年たつのだろう・・・。」
俺はベランダに出て、手すりをつかみながら呟いた。 外には、半壊している家や電柱が折れていて、道路がヒビでデコボコだった。
「気になるの? 自分の世界。」
「いや・・・と言ったら嘘になるな・・・でも・・・大丈夫だと思う・・・あの人たちがいるから、僕はそう信じているから・・・。」
「・・・。」
そうやって、お互いは黙ってしまった。 元々こんな話しても、俺は話なんかろくに聞きたくもなかった。 あの人の事はもう、思い出したくもなかった。 だけど。
「・・・淳・・・いや・・・。」
俺はそこで言葉を切って、淳のほうに向いた。
「ナミナ・・・。」
その時、淳は驚きの表情をした。 彼女の本当の名前言うのも何年ぶりだろうか・・・。 元々の世界を離れてから、俺はナミナの事を淳と呼んでいた。 だから、他の世界でこの名前を呼ぶのは初めてだ。
「・・・ほんの少しの間、家を空けてもいいかな・・・?」
そう言っても、淳の驚きの表情は変わらなかった。 俺は自分の手を見た。 そして、脳裏からあの人たちの事が浮んだ。 しかし、俺はすぐにかき消した。
「僕は、昔の力ではなく・・・今の力で・・・世界を救いたい・・・これ以上、他の人たちを絶対に死なせるわけにはいかない。 かつて、様々な世界を救ってきた・・・父さん達のように・・・僕は世界を救う。」
俺は見ていた手を握りながら強く言った。 あの人の事は思い出したくもないけど、あの人の最後に言った言葉は俺はずっと守っていきたい。 そしたら、淳はふうっと息を吐いた。
「・・・いいわよ。 帰ってきたら、おいしい料理を作ってあげるから・・・。」
そう彼女は、笑顔で言った。 それを見た俺は、にこっと笑った。
「楽しみにしておくよ・・・。」
そう言って、俺の右手に魔力をこめて空間にそっと触れた。 そしたら、空間に大きな丸い円が現れた。 昔の俺の魔力は単体で空間転移は簡単にできていたが、昔の魔力は封印していて今は、単体で空間転移は無理だけど、右手に魔力をこめて空間に触れたら、空間の扉が開いてそこから他の世界に転移するしかない。 俺は首だけを淳のほうに振り向いた。
「・・・ありがとう、ナミナ・・・。」
そう礼を言って俺は、空間転移をした。
「・・・全く・・・あの人は・・・。」
龍が転移してしばらくしたら、淳は自分のベットに腰を下ろして一人呟いた。
「・・・うれしいな・・・あの人が・・・昔みたいに呼んでくれて・・・。」
そう顔に手を置き、嬉しい顔をしているようで懐かしい顔をしていた・・・。
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