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2009/07/20 20:50 |
告白(前編)2 |
―陸南中等学園 保健室―
キーンコーンカーンコーン・・・。
「う、う~ん・・・。」
僕はチャイムが鳴っている中、目が覚めて上半身を起こした。
「起きたか、桜咲?」
僕は目がまだ霞んでいる中、誰かがいて、その方へ向いた。
「あ、先生・・・ふあ~あ・・・。」
「いきなり、あくびするな。 まあ、別にいいけど・・・お前、体調は大丈夫か?」
「あ、はい、吐き気は無くなりましたが頭痛がまだしています。」
「そうか。じゃあもう少し休んでいけ。 あとで担任の先生に伝えてやるから。」
「じゃあ、お願いします。」
そう言ったら、多木先生は椅子から立ち上がって冷蔵庫を開け缶コーヒーをとった。冷蔵庫の中は缶コーヒーが数十本ぐらいはあった。
「飲む? かなり苦いけど。」
と先生は片方の缶コーヒーを僕の方に差し出した。
「いりませんよ。 どちらかと僕は甘口派なので。それに学校で缶コーヒーなんて飲んでいいのですか?」 と言ったら
「そう。 それは残念。」
軽くスルーして、缶コーヒーを冷蔵庫にしまって片方のコーヒーを飲んだ。 そしたら、なにか言いたいことがあったかの様な顔をした。
「あ、そうそう桜咲。 お前の妹達、早退したから。」
「え?」
「お前が寝ている間、下の方の妹が熱が出てな。親に連絡していたら、 ちょうどいいタイミングで上の方の妹が来てな、連れて帰らしたんだ。」
「なんで、涼まで帰らせたのですか?」
「私は最初、親に頼もうとしたのだが上の妹がつれて帰るって言ってな。 それでだ。」
そう言ったら缶コーヒーを飲んだ。
「まったく・・・一年中健康のお前らがどうして、こんな目にあっているのだ?」
うんざりした顔で頭をかき、缶コーヒーを飲み干し、ゴミ箱に捨てた。
「まあ、いいけどね。 じゃあ、私はまた職員室に戻るから。体調が直るまで安静して。 それと、冷蔵庫のコーヒーなら飲んでもいいから。」
と言い残して、保健室から出た。 だから飲む気は無いですよ、とため息をした。
「ふう・・・やっぱあの先生苦手だな・・・面倒見はいんだけどなんかな・・・。」
と、もう一回ため息をした。 そしたら、
「失礼します。」
急に入り口のほうから、凛とした声がした方を見た。
「あ、佐倉塚さん・・・。」
「あの・・・ごめんね。 あれは・・・その・・・。」
僕は謝ろうとしたが、さすがにどういう風に言ったらいいか分からなかった。 そしたら、急に佐倉塚さんはクスッと笑った。
「いいわよ、もう怒ってないから・・・それより、体の方は?」
「あ、うん。 まだ頭痛はするけど、大丈夫。」
「そう、まあ朝よりは顔色がよくなっているしね。」
「それにしても・・・あなたと話すのって久しぶりじゃない?」
「そういえば・・・そうだね。」
彼女と話すのはずいぶん久しぶりの様で、十二族の件以来、喋ってないような感じがする。
「ねえ・・・桜咲くん。」
「なに?」
「久しぶりに・・・その、お昼ご飯・・・食べる? 私は・・・その、別に無理には頼まないわ。 あなたが・・・いいのなら・・・。」
彼女は頬を赤くして、もじもししなが言ってきた。 僕は考え込んだ。そういえば、彼女とご飯食べるのあの時以来だ。
「う~ん・・・いいよ。 涼たち、早退しちゃったからご飯食べるの一人っきりになっちゃうしね。」
僕は頷いてそう言った。 そしたら彼女はボソボソと何かを言った。そんな中、急に入り口のドアが開いた音がした。
「瞬ちゃん、いる?」
おっとりとした声が、僕の名前を呼んだ。
「林ちゃん。 どうしたの?」
「なんだか、瞬ちゃんの様子が変だから心配して瞬ちゃんの教室に行ったらいなくて、それでクラスの人に聞いてここにいるって。」
「そうなんだ・・・ごめんね、心配させて・・・。」
「ううん、気にしないで。 ところで、この人は?」
林ちゃんは佐倉塚さんのほうを見た。紹介しようとしたら、佐倉塚山は口を開いた。
「初めまして、私は桜咲くんのクラスメイトの佐倉塚 菜々。 あなたは?」
「あ、私は1年E組の草原 林です。 瞬ちゃんの幼なじみです。」
林ちゃんは少しオドオドして言った。
「草原さん、ね・・・。 その名前覚えておくわ。」
「はあ・・・。」
林ちゃんはよく分からないまま頷いた。 僕もよく分からないまま首を傾げた。
「それじゃあ、桜咲くん。 またあとで・・・。」
そう言って、佐倉塚さんは立ち上がって保健室から出て行った。それから数十秒後、多木先生が戻ってきた。
「お、草原か。 桜咲の見舞いか?」
「はい・・・そうですけど。」
「草原、見舞いがいいが、時間考えているのか?」
そう言ったら、多木先生は時計のほうを見た。それにつられて、僕達も時計のほうを見た。 時計の針は9時53分。 もうあと、2分で授業のチャイムが鳴る。
「あ、いけない。 次、理科室で実験授業だった!」
林ちゃんは思い出したかのように慌しく言った。
「急いだほうがいいぞ? もうすぐ、チャイムが鳴るぞ?」
と言ってコーヒーカップにお湯を入れた。 まだ飲むのですか・・・胃袋は大丈夫なのなのかな、この人は。
「はい。 それじゃあ、瞬ちゃんまたあとで。」
林ちゃんは手を振って、いそいで保健室から出て行った。
「お前はいいから、寝ておけ。 頭痛、治らねえぞ?」
と、僕に近づきおでこに軽くデコピンしてきて、椅子に座った。僕はおでこをさすりながら、小さくため息をして布団にもぐって、また眠りに付いた・・・。
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