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2009/07/01 17:03 |
姉 |
―桜咲宅―
「おーい・・・。」
僕はリビングから出て洗面所に入って、彼女がいる風呂場に小さくノックした。
「もういいから、出てきて。」
そう言ったら、彼女は脅えた声で、「・・・だ、だれもいない?」と言った。
「うん、誰も居ないよ。 でもいつ来るか分からないから、いそいで。」
「う、うん・・・。」 と言ったら、ドアを開けて出てきた。
「とりあえず・・・外に出よう。 家の中じゃいつまで持つかわからないから。」
そう言って、僕は彼女の手をとろうとしたら、彼女は慌てて手を引っ込んで、体が震えていた。
「あ、そっか、ごめん・・・。」
そういえば、彼女は重度の男性恐怖症の事を忘れていた。
「・・・。」 彼女は黙って、顔を下に向けたままだった。
「とりあえず、行こうか・・・。」 そう言って僕たちは歩き出し、外に出た。
―堂千公園―
「と言っても、何処に行ったらいいのか・・・。」
僕はベンチに座ってポツリ独り言のように言った。 外には出たのはいいけど、何処に行ったらいいのか分からない。 彼女は家から出てからこの調子で何も喋らないし・・・。と思って、小さくため息をしたら、
「あ、あの・・・。」
突然、彼女が口を開いた。
「何?」
「何で・・・あなたは、そんなに優しいの・・・?」
「え?」
「私は・・・今まで、男の人は恐かった。 触れたくないぐらい・・・恐かった・・・。でも、あなたは違う・・・。 あなたは他の男の人とは違う・・・まったく恐くない・・・どうしてなの?」
「どうしてって、それは・・・当然の事じゃないかな。」
「どうして?」
「男は女にはやさしく、時には厳しく。て父さんが言っていた。 それにこの世界の男の人は、君が思っているのと違うよ。 この世界の人間はやさしいよ。 とっても。」
「そうなの?」 彼女は顔を上げて、僕の方に向いた。
「うん。」 僕は笑顔で頷いた。
そう言って、しばらくお互い、何も話さなかった。 家出て何分ぐらいたつのだろうか?とぼんやり考えながら、
雲を見ていたら、
「美奈!」 と叫んだ。
僕はその叫んだほうを見たら、女性がいた。
「お姉ちゃん・・・。」
「え? お姉ちゃん?」 僕は彼女の方を見た。
「うん・・・。 知佳お姉ちゃん・・・、私のたった一人のお姉ちゃん・・・。」
小さな声で言ったから聞き取れなかった所があるが、どうやら、彼女の姉らしいみたいだ。
「お前は、裏切り者の! アンタが美奈をさらったのか!」
そう言ったら二丁の銃を出し、僕に向けた。
「待ってください! 僕は彼女には何もしていません!」
「じゃあ、なんで美奈がアンタの横にいるのさ!?」
「僕はただ、彼女を探している人を探していたのです! 決して、彼女には手を出していません!」
「ふん、信用できないね! アンタは裏切り者の息子! あたし達の敵なんだから、信用は一切出来ないわね!」
「くっ!」
僕がいくら言っても、彼女は信じてくれなかった。
「アンタを殺して、美奈を連れて帰るわ!」
彼女は引き金を引こうとした、瞬間。
「お姉ちゃん・・・!」
突然、彼女が口に開いた。 そしたら、銃を持った姉は、彼女の方を見た。
「美奈?」
「・・・この人が言ったこと、全部・・・ほ、本当・・・。 だったから・・・やめて・・・お姉ちゃん・・・。」
彼女は震えながら言った。
「ど、どうしたの、美奈? 男を庇うなんて・・・あれだけ、男が嫌いだったのに・・・。」
さすがに彼女も敵であって重度の男性恐怖症の妹が男である僕を庇うのは驚くだろう。
「でも・・・この人は違う・・・私に・・・優しくしてくれた・・・私は彼の敵なのに・・・彼は優しくしたの・・・。 だから・・・おねがい・・・。」
彼女が喋り終わり、しばらくしたら、姉の方は銃をしまった。
「・・・わかったわ、あなたがそこまで言うんなら、コイツは殺さないわ。」
「ありがとう、お姉ちゃん・・・。」
「それと裏切り者の息子。」 彼女は鋭い目をして僕を睨んだ。
「何ですか?」
「今回は見逃してあげるわ。だが、次にあった時は必ずアンタを殺す。 それを覚えておくことね。」
「お姉ちゃん・・・。」
「美奈、分かっているはずよね? 裏切り者は必ず殺さないといけない事を・・・だけど今回の事はあたしに任せて。 あのお方ならきっと許してもらえるから。」
「うん・・・。」
「・・・帰るわよ、美奈。」
そう言ったら、彼女は背を向け、公園を出た。
「それじゃあ・・・ね。」
「うん、またね。」
そう言って彼女は歩き出した。すると、数十歩歩いたら、急に彼女は立ち止まった。
「・・・だから。」
「え?」
「・・・私の名前は、真木野 美奈、だから・・・。」
「・・・僕は桜咲 瞬。 君の事は覚えておくよ・・・えーっと・・・。」
「・・・美奈でいいよ。」
「ああ、じゃあ美奈、またね。」
「またね、・・・瞬。」
そう言ってお互いは手を振りなら別れていった・・・。
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