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新者の雑記置き場

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2010/03/03
23:59
少女達の真実

―喫茶店「茶屋」―

「そして私たちは・・・この世界にやってきた。」

「・・・。」

まさか、こんな過酷なことがあったなんて。 僕は改めて異世界の事に驚いた。 智東さんは話を進めた。

「その後は私たち気絶していたから分からないけど智東家のご老人に聞いたところ、冷たい雨の中・・・今年の二月ぐらいかしら。 たまたま通りかかった智東家のご老人に助けてもらったて言っていたの。」

「その時の私たちは、ちょっと不安と恐怖感あったかな。 全く知らない世界にいて、全く知らない人達がいるから、どう生きていったら分からなかった。」

それもそうだ。 彼女達にとっては右も左もわからない世界だ。 それに彼女たちはまだ僕と同じ子供。 不安はあって当然だ。

「けど・・・おば様やおじ様に私たちの事を話したら、「その大切な人が迎えに来るまでここにずっといなさい。」って言われたの。 とても優しかったし、暖かい言葉で本当に嬉しかったの。」

「私たちの世界では追い返されるか、体を張って働かされるのが当然だったから、あんなに優しく言われたの家族と友人以外初めてだった。」

「でも、本当によかったの? クレトアさん、君達の事を・・・。」

言いかけると、智東さんは首を振った。

「ううん、いいのよ。 私もクオン・・・佳奈美も、ここにいたいと思っているの。 一時はクレアが迎えに来てくれたらこの世界から離れようと考えたけど、おば様やおじ様、学校の人達、そして・・・この町のみんなの人達の優しさや暖かさにふれあっていたら、何だか・・・この世界の人達を守りたいと思ったの。」

すると、智東さんははっとして黙り込んだ。 しばらくすると、急に頭を下げた。

「・・・あの、ごめんなさい。 その・・・あなたの事を殺そうとしたこと・・・本当にごめんなさい。」

彼女は暗い声で言った。

「いいよ、もう気にはしてないから。」

僕は笑顔で言い返した。 とは言ってもさすがに今は気にしてはいる。 今はそう簡単には消えないがその内消えると、僕は思う。

「所でさあ、クレトアさんといた時、話した黒いフードをかぶったという男ってどんな奴なの?」

「それが・・・顔とか全然見えなかったの。 私たちは警戒したのだけど、男はあなたを殺せば、大切な人を生き返らせようと・・・。 何であなたを殺せって言った理由は分からないけど。」

「最初は迷ったけど・・・私にとってクレアはとても大切な人で、その彼が死んだって知って・・・。」

「でも、後になってから思ったの・・・大切な人を生き返らせよう・・・そんな言葉に騙された私は馬鹿だった・・・クレアは生きていたし、前にいた世界でもクレアも言っていた。 死んだ人は絶対に生き返らない・・・って言っても、実際の所、ナルも生き返っていて驚いたけど。」

彼女は苦笑いするかのような表情で天井に向けて言った。 だけど、クレトアさんの事が大切なのが僕でもよく伝わっている。

「・・・本当は、殺したくもなかった。 誰も。 こんないい人達ばかりの世界に、悪い人間なんていないもんね・・・でも、私はそんな人を殺そうとした。 ほんと、私って馬鹿だったわ・・・。」

「あの・・・。」

すると、ここでさっきから黙っていた智東さんの妹、佳奈美さんがおずおずと手を上げた。

「その、隣のいる女の子は・・・どちらさんですか・・・?」

そう彼女は僕の隣の方に指をさし、つられて見たら、青い髪をして季節はずれの冬物の服をきた少女が座っていた。 僕は少し驚いてズッコケようとしたが何とかこらえた。

「エミ・・・いつの間にいたの・・・。」

―あなたが、話を真剣に聞いている時にです。 全く・・・私がいない間にどこかに行かないでください。 もし、闇の死者―ダーク・デット―が来襲してきたらどうするのです?―

エミは、じっと僕の顔を無表情で見つめていたが、実際は怒っている・・・いや、かなり怒っている。 無表情だが、怒りのオーラがひしひしと感じ取れる。

「ごめん・・・。」

「えっ? なんで、桜咲君が謝るの? その子、何も言ってないのに?」

と、佳奈美さんが言った。 そういえば、エミの喋れないかわりにテレパシーで話すけど、それを聞けるのは契約者の僕だけだって事を知らなかったっけ。

「彼女はエミ。 見た目は人間だけど本当は猫の夢魔で僕の契約魔なんだ。 彼女の言葉は契約者である僕にしか聞こえないんだ。」

説明したが、二人はあんまり理解できていないような顔をしている。 まあそれもそうだろう。 彼女達の世界は魔法はある竜はいたが、契約魔なんてまずありえないだろう。

「じゃあ、エミ。 猫の姿に戻って。」

そういうと、エミは頷き、あっと言う間に猫の姿に戻った。 エミはスッと僕の肩に乗っかった。 

「あ、本当だ・・・。」

「あれ? 智東さん、エミの事を知っているはずじゃあないの?」

「え? 私は知らないよ。」

智東さんはきょとんとした顔で言った。 本当に知らないのか? この前、彼女もエミを見たから覚えているはずだけど・・・。

「でも、この前の朝早くから・・・。」

と、言いかけたら智東さんの隣から甘い・・・というか、甘い物を食べたようなうっとりとした声が聞こえた。 

「かわいい・・・。」

佳奈美さんは両手に頬を当て目を潤わせながら言った。

 

「ありがとうございました。 またのご来店をお待ちしております。」

店員さんは頭を下げながら言って僕たちは外に出た。外はすでに太陽が半分沈んでいて橙色の空が広がっていた。 ちなみに、さっき注文した品の全額は智東さんが支払った。 僕も出そうとしたが私からのおごりだってしつこく言うからしかたなく彼女の言葉に甘えた。

「なるほど・・・あの時いたのは、智東さんじゃあなくて佳奈美さんだったんだ。」

後に佳奈美さんから聞いた話じゃあ、あの時いたのは智東さんじゃなくて佳奈美さんだったことがわかった。 

「この子、大の猫好きで今も近所にいる猫と遊んだりしてるの。 だけど・・・。」

智東さんは喋るのやめ、ちらりと佳奈美さんの方に視線を向けた。

「はあ・・・かわいい・・・。」

一方、佳奈美さんはさっきから幸せそうな顔をしながらエミ(猫化)の体を抱きついていた。 しかし、エミのほうは何故か苦しそうにじたばた暴れていた。

「あのように、少し暴走してしまい猫を強く抱きしめてしまうこともあって、抱きしめられた猫は逃げ出してしまうの・・・。 まあ、数日したら猫の方から戻ってくるけどね。」

「しかし・・・本当に似てる・・・というか、そっくりだね。 二人とも。」

改めて二人を見比べると、見た目も声も完璧にそっくりでどっちが智東さんでどっちが佳奈美さんか見分けも付かない。

「私と佳奈美は顔も声も瓜二つだから、家族とクレアとナルは分かっていたけど、他の人たちは分からないことがあるの。 今でも、間違われることもあるけど慣れちゃったわ。」

智東さんは笑顔で言ったが、僕はどうもこのままだと僕も他の人も混乱してしまいそうだ。 と、考えていたら雑貨屋「アリス」が見えてピンッと閃いた。

「ちょっと待っててね。」

僕は二人に言って、「アリス」の店内に入っていった。 途中、エミが―ちょ・・・待って下さい・・・!―って言ったような気がしたが気のせいにした。


―数分後―

僕はあるものを買って店を出て、智東さん達と一緒に堂千公園によった。 公園には誰もいなくベンチに座った。 僕は右側で、智東さんが真ん中、佳奈美さんが左側に座った。

「はい、これ。」

僕は袋から、二つ緑の紙に包んだあるものを取り出してそれぞれに渡した。 智東さんはしばらくあるものに見つめていて、佳奈美さんは「開けてもいい?」っと言ってきて僕は頷いたら、佳奈美さんはあるものを包んだ紙を丁寧にあけていった。

「これは・・・。」

佳奈美さんは紙に包まれてあったあるものを見た。 智東さんも開け始めて佳奈美さんと同じあるものを見た。

「髪留め。 智東さんのほうが花の赤で、佳奈美さんが猫の青。 これなら、どっちかどっちかわかるでしょう?」

そう、あるものとは髪留めの事。 彼女たちは今の外見では、間違えられそうだから髪留めを買ったのだ。

「でも・・・。」

智東さんが何か言おうとしたら、僕は言葉を続けて言った。

「それは、僕からのプレゼントとさっきおごって貰った分と・・・疑ってしまった、その謝礼だよ。」

言った瞬間、彼女たちは「えっ?」と言ったが、僕は気にせずに話し続けた。

「僕は、君と最初にあった日、君からすごい殺意を感じて敵かと疑ったんだ。 仮面の女が君だって事も驚いて、やっぱり敵だったんだって一瞬思ったんだ。 佳奈美さんも君と一緒にいたから敵かと思っていた。 だけど、一つだけ違って一つだけ分かった。 君たちは、敵じゃない。 いい人だって言うことがわかった。」

「さっき、智東さん。 騙された自分が馬鹿だって言ったけど、実際は君たちが敵だと思った僕のほうが大馬鹿だったような気がするよ。」

「でも、私はあなたを殺そうとしたのよ!」

智東さんは反論したが、僕は首を振った。

「それは、僕も同じだよ。 もし、あの時仮面が弾き飛ばなかったら・・・智東さん、本当に死んでいたのかもしれないよ。」

僕は本当の事を彼女にぶつけた。 僕も仮面の女の正体が智東さんだと分からなかったら、本当に殺してしまっていたかもしれないし、その後、仮面の女の正体を後に知ったら僕はたぶんショックをうけていたかもしれない。

「どちらにしよう、お互い殺そうとしたのは変わらないが、僕のほうが悪いと思っている。 いい人なのに・・・僕は疑ってしまった。」

今でもそう。 僕は殺気を感じてから警戒をしていて彼女から避けていたから、彼女の事は何一つも知らない。 だけど喫茶店で彼女たちの話を聞いていて、知った。 それを知ったら自分があまりにも馬鹿馬鹿しく思えた。 智東さんはやがて、視線をそらして顔を俯かせた。

「私は・・・いい人じゃないよ。 私は、たくさんの人を殺した。 殺し続けた。 怨みもあった。 私は・・・」

「違うよ。」

僕は彼女の言葉を否定した。 俯いていた彼女の顔は驚いたのような顔をして前に向いた。

「それは、昔・・・君がシオンって呼ばれていたときだろう? 今は違う。 今の君は、智東 真奈美。 その智東 真奈美は人を殺してはないだろう? 僕の知っている智東 真奈美はこの世界に守りたいものがある。 異世界から来たのに関わらず、守りたいものがある。 守りたいものがあるのならそれだけでも立派だと思うよ。 だから・・・君はいい人なの。」

そう言ってしばらくお互い沈黙した。 風が吹く。 まだ、六月なのにやけに冷たい風が肌に感じる。 やがて、風がやんだら智東さんはふうっと息を吐いて言った。

「・・・負けたわ。」

そう呟いた途端、彼女の顔が一瞬微笑んだのが見えた。

「なんだか、クレアに説教されてるみたいな気分だった。 クレアもこんな風に私の事を説教をしてくれたっけ・・・そういえば、今更だけどあなたもクレアにそっくりよね? 体格違うけど。」

智東さんがクスクスと笑っていたら、隣にいた佳奈美さんも笑い始めた。 そして・・・僕も気づいたら笑っていた。 安心したのかな、何だか顔が微笑んでしまう。

 

分かれ道の時、空はもう暗くなり始めていて、外灯が照らし始めた。

「今日はありがとう。 あなたのおかげで少しもやもやした気持ちが晴れたわ。」

「この髪留め、大切にするね。」

「喜んでもらえてよかったよ、佳奈美さん」

「ねえ、桜咲君。」

「なんで佳奈美の時は下の名前で言って、私の時は上の名前で呼ぶの? ちょっと変じゃない?」

智東さんはすこしむくれた表情をしながら言った。 確かに、佳奈美さんも上の名前は智東だし、ちょっと変かもしれない。

「私の事は真奈美でいいわ。 それかさん付けでもいいわ。」

「うん、わかった。」

僕は頷いたら、智東さんが右手、佳奈美さんが左手を差し伸べてきた。

「これは、友情の握手。 私たちの国ではこれでお互いに固い友情が結ばれるからって言われたの。」

友情・・・か。 確かに僕は、彼女の事を友達だって事を全く思ってなかった。 ずっと警戒してあんまり喋ってないし、接してはなかった。 だけど、今の彼女なら・・・。 僕は両手を出して、ぎゅっと彼女たちの手を握った。

「じゃあ改めて・・・よろしくね。 真奈美さん、佳奈美さん。」

「「よろしく!」」

僕たちは強く握手をして、彼女たちは笑顔で言ってくれてそれぞれ家に帰っていった。 

だけど、智東さんの話していた事でわかった点と気になる点があった。 気になる点はやはり、僕を殺せといった男。 この男の正体は絶対に知らなきゃ駄目だ。 僕の考えでは彼女がやってきたのは二月だから十二族か闇の死者の可能性は低いと思うから、別の組織かもしれない。 とにかく何故、僕を殺そうとした理由をその男から聞きださないといけない。 

そして分かったことは、彼女が言っていた空間からの亀裂・・・この言葉である組織が頭に浮んだ。 

闇の死者―ダーク・デット―・・・。 

奴らも必ず亀裂の中から出てきて現れる。 クレトアさんの弟、レナウドさんの体を乗っ取ったキリアと名乗った奴も、もしかしたらこの前現れた、ハゼルドという闇の死者の人間と同じ可能性があるかもしれない。 だけどこれはあくまで可能性の話。 そのキリアが本当に闇の死者の人間なのかはまだわからない。

今のところ、これぐらいしかわからない。 とにかく、今は時を待とう。 そうすれば、必ず分かるはずだ。

 

数分後、辺りはすっかり暗くなっていて、それぞれの家から電気がついていた。

「えーっと・・・エミ? 大丈夫?」

僕は肩に乗っているエミの方に視線を向けた。 エミはさっきから佳奈美さんが強く抱きしめすぎたせいで、グッタリ疲れたのだろう。

―・・・あの子、容赦なく強く抱きしめたから体中が痛いです。 今度からあの人にそばにいたら人化しなくてはなりません・・・。―

そう言った後はなにも喋らず、再びグッタリした。 僕は思わず苦笑いしてしたらどこからかキン、と鋭い音がして僕は立ち止まり、後ろを振り向いた。 だが、どこもおかしな変化はなく音も聞こえてなかった。

「エミ、今、何か聞こえなかった?」

僕は視線をエミに向けて、一応聞いてみた。

―はい、たしかになにか聞こえました。 何か・・・堅いものがぶつかり合った音に似ていました。―

エミは冷静に言った。 僕は再び、視線を戻して耳をすましたが、何も聞こえてなかった。

「・・・気のせい・・・かな?」

僕は首を傾げて前に向き、歩きだした。 しかし、この時僕は知らなかった。 彼女達の・・・戦いがあった事など、僕達は・・・まだ、知らない・・・。  
 

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