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2009/12/25 20:53 |
滅び去った国の生き残りの戦士達(中編) |
―???―
「う・・・うん・・・。」
意識が戻ったシオンは目を開けた。 ぼやけている目を擦って上半身を起こして辺りを見た。 どこかは分からないがテントの中にいるみたいだ。
「気が付いたか、シオン?」
すると、近くから男の声が聞こえてそっちの方を向いた。
「隊長・・・? あれ、私は何を・・・?」
「倒れていたのだよ。 西門の所に・・・。」
「西門・・・?」
呟いた瞬間、シオンははっと思い出し体を起こしてテントから出た。
「待ちなさい、シオン!」
クレトアはシオンを呼び止めたが、彼女は止まることも振り向くことも無く走り出した。 テントは王国から少し離れた所にたっていた。 数分後に止まることも無く門をくぐり町の中走った。 雨の中だから、地面が濡れていて途中滑りそうだった。
「!!」
彼女に立ち止まった。 目に飛び込んできたのは町の人達だった。 しかし、シオンの見たものは町の人ではなくただの死体だった。 それもすべて。 血は無かった。 すでに雨で流されていったのだろう。 だけど、シオンは目の前の光景に震えだしたが、彼女は首を横に振り再び走り出した。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・!」
彼女は走った。 途中で転んだ。息切れもした。 だけど、それでも彼女はある場所に目指して走り続けた。やがて数分後ある一つの家の前で立ち止まった。 その家は屋敷ほど大きくないが、他の家と比べたら大きい家である。 門のには銀のプレートがあってそこには「アルファシア家」と刻まれていた。
「ハァ・・・ハァ・・・。」
シオンは家の扉を開けて入っていった。 家の中は痛いほど静かというとほぼ無音に近かった。 外の雨の音が嫌って言いたいほど聞こえた。 そんな中、彼女は歩き始めた。 彼女はまず最初にロビーを見た。 そこには誰も居なかったからすぐに別の所に行った。 次にリビング、キッチン、着替え室、洗面所を調べていったが誰もいなかった。
そして次に行ったのは父母の寝室だった。 だが、なぜか彼女はすぐに扉を開けなかった。 もしこの先に・・・と思ったら手が震えてきた。
「・・・っ。」
彼女は首を振った。そんなはずがないっと。 そして手を震えながらドアノブに触れ、扉を開けた。 そして・・・彼女の思いが当たってしまった。 目の前には倒れている中年の男女がいて、血のにおいが嫌でもした。その男女はシオンとクオンの父親と母親である。 この光景をみた彼女は急に全身に震え始めて悲しさが浮き上がりそうだった。
だけど彼女はぐっとこらえた。 彼女はすでに死体になっている両親を様子を見た。 二人とも心臓を貫かれた痕が残っていた。
「ハルカ母様・・・クレイ父様・・・。」
シオンは両親の名を呟き二人をベットに運んで、布団を丁寧にかぶせた。
「ひっく・・・ずず・・・。」
すると、隣の部屋から泣き声みたいな声が聞こえて部屋を出ようとしたら、一度だけ両親の顔を見てしばらくしたら部屋を出て行った。 泣き声が聞こえたのは隣の部屋でシオンはノックもせずに入っていった。 すると、部屋の隅にシオンと同じ白銀の髪をした女の子が泣いていた。
「クオン・・・。」
シオンはその女の子の名を言った。 すると、クオンはシオンの方に顔をゆっくりと向けた。 彼女の目は涙があって赤くなっていた。 シオンはゆっくりクオンの側まで歩いて前で座ってぎゅっと抱きしめた。
「私は・・・何もできなかった・・・父様も・・・母様も・・・友人も、あなたの友人も、町の人も、ガーヴェルトさん達も、王も・・・なにも・・・守ってやれなかった。」
シオンは少し震えた声で言った。 彼女の目からは少し涙が出てきたが、彼女は涙をぐっとこらえた。
「姉さん・・・。」
「・・・誓ったのに・・・みんなを守るって誓ったのに・・・私は・・・何一つもできなかった・・・。」
声がどんどん震えてきて、涙もどんどん溢れ出てきたがそれでも彼女は涙を流さなかった。 すると、クオンがシオンをそっと抱きしめた。
「姉さんは・・・悪くはないよ。 だから・・・自分を、責めないで・・・。 姉さんがそんな事言ったら・・・私も、悲しいから・・・。」
「それに姉さんも・・・泣きたいでしょう? 泣いてもいいのよ? 今は・・・私達しかいないから・・・。」
言った瞬間、シオンの目から溜まっていた涙が出てきてついに零れた。 涙は止まることなくどんどん零れていった。 そして、クオンも再び涙を零した。
「ゴメンね・・・ゴメンね・・・クオン・・・。」
シオンは目をぎゅっと瞑り、クオンをさらに強く抱きしめ歯を食いしばり震えた声で謝った。
「謝らないでよ・・・姉、さん・・・謝らないで、よう・・・。」
クオンも目をぎゅっと瞑りながら言った。
「う・・・うううう・・・。」
二人の泣き声は家の中に静かに響いていて雨の音も強くなっていった。 そんな中、家の前にびしょ濡れになっている男が一人立っていた。 クレトアだった。
「クレトア隊長。」
「ナル。 城の方はどうだった?」
クレトアは言った。 後ろを振り向かずにシオンの家をずっと見たいた。
「全滅でした。 死因は心臓に何かのものが貫かれた後がありました・・・全員に。」
「そうか・・・。 やったのは同一人物か・・・、または同じ魔術を使える集団か・・・。」
「シオンに聞いてみたら分かるのではないですか?」
ナルシファが言ったら、クレトアは首を横に振った。
「今は、無理みたいだ。 時が着たら落ち着くだろう。 その時に彼女に話してもらおう・・・。」
「そうですか・・・。では、私はもうちょっと調査をしてきます。」
そう言ってナルシファは体を反対に向き歩きはじめようとしたら、クレトアが言った。
「ナル、君は家族の所に行かないのか?」
言った瞬間、ナルシファはピタッと止まった。 しばらくしたらナルシファは振り向くことも無く、袖を握って首を振った。
「・・・いいえ、行きません。 見るのが・・・怖いので。」
「・・・そうか。」
そう会話が終わりナルシファは歩き出して、クレトアは一人となった。
「何だろうな・・・こういう気持ちは・・・。」
クレトアは一人呟いて、左手を胸元に置いた。
「・・・怨み・・・怒り、か・・・私には似合わない気持ちだな・・・。」
彼はそう呟いたら、右手の側から白い魔法陣が現れそこから刀柄が出てきて引っ張り出した。 彼が扱っている刃が二つついている両刃剣である。 重さはかなりあるが、彼だけが片手で使える剣である。
「だが・・・今はこの気持ちに素直になるべきか・・・。」
そう言って瞬間、彼の近くにあった少し大きな石が一瞬で真っ二つになった。 クレトアが肉眼でとえることが出来ないほどの速さで斬ったからだ。
「仲間や王、民や家族・・・そして私の部下を傷つけて、悲しませた者・・・この剣で・・・必ず斬る・・・!」
クレトアは今までにない怖い顔をして荒々しい声で言ったら、その場から離れていった・・・。
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