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2010/01/11 20:56 |
滅び去った国の生き残りの戦士達(後編) |
―カルチア城外 南門付近―
夜、雨が止み、日が暮れた空に星が輝いていた。 そんな中、完全な無音の城の付近にテントがあった。 焚き火の中心に輪になっている二人がいた。 一人はクレトアでもう一人はシオンだったが、シオンはまだショックを受けていたのか顔を俯いていて目は真っ赤になっていた。
「・・・なるほど。 事情はよく分かった。 つまり、そのキリアという男がみんなを殺したのか?」
と、クレトアが頷いて言った。 すっかり泣き崩れたシオンとクオンは雨が止んでから戻ってきたが、シオン達は落ち込んでいてクオンはテントに入ってから一歩も出で来なかった。 シオンはまだつらい思いをしていたが、それでも勇気を振り絞って言った。
「でも、なぜ君だけが生きているのだ? 君も城内にいたはずだぞ?」
クレトアが言ったら、彼女は黙り込んでしまって微かに震えた。
「・・・すまない。 つらかったら無理に言わないでいい。 私も無理に言わせるつもりは無い。」
それに気づいたのかクレトアが優しく言ったら、シオンの横から野菜がいっぱいはいったスープが差し出されて、シオンが顔を上げたら彼女の親友のナルシファがいた。
「シオン、これ食べて元気だして。 私はあなたのつらい姿は見たくないから。 だから元気出して?」
そう言って、シオンは沈んだ顔で「ありがとう・・・。」と小さな声で言ってスープを受け取った。
「しかし、戻ってきて正解だった。 城を出て、少し離れた所で急に胸騒ぎがしたら無理して戻ってきたが門の所で門番が死んでいて、慌てて町の中に行ったらみんなも死んでいて・・・」
すると、ここでクレトアは喋るのをやめ急に立ち上がった。
「どうしましたか? 隊長?」
ナルシファの顔も険しくなった。
「静かに・・・何か来る・・・。」
そう呟いたら、風が止んだ瞬間だった。 突如、空間から亀裂が現れたら、クレトアとナルシファはすぐに武器を持った。 そして、そこから人がゆっくりと出てきた途端、シオンはひっと声をあげた。
その人は黒い服に黒いフードに身に包んでいる不気味な人だった。 だが、シオンは知っている。 彼が町のみんなを殺した張本人、キリアだっていうことを。
すると、騒ぎに聞こえたのかクオンがテントから出てきた。
「・・・ほう・・・まだ生き残りがいたとはな・・・む?」
すると、キリアはクレトアの方に視線をむけた。 クレトアは剣を握り締めた。
「・・・何者だ、そこの男よ・・・?」
と疑問が浮ぶかのように言った。 もちろん、クレトアも何を言っているのかよく分からなかった。
「・・・ただの人間ではない力を感じる・・・それもかなり強力な力・・・。」
「名乗る気はないが、貴様がキリアという男か?」
「・・・そうだといったら・・・どうする?」
そうニヤリと笑ったら再び風が止んだ。 だが、両者は動く気配はなくただ睨んでいた。 そして次の瞬間動いたのが、クレトアだった。
「・・・皆の仇・・・そして、私の部下を傷つけた罪として貴様を斬る・・・!」
クレトアは地面を蹴った一瞬で、いつの間にかキリアの前に居た。 クレトアは剣をおろしたがキリアは簡単にかわして後ろに飛んだ。
「・・・フッ。」
キリアは特に驚く頃も無く鼻で笑い、右手を広げたら魔法陣が現れてそこから炎の球が出てきたがクレトアは剣でその球を斬った瞬間。 いつの間にかキリアの後ろにいて、剣を横に振ろうとしたらキリアは空中でバク転してかわした。 その隙にキリアは手を拳にしから黒い炎が燃え上がってクレトアの頭に当たるかと思いきや、クレトアはいつの間にか地面の方にいて攻撃はあたらなかった。 キリアは短く舌打ちをして着地した。
見ていたシオンたちは驚愕していた。
「シオン・・・隊長ってあんな動きなんかでしたことある?」
「私も、見たことがない・・・あんなに素早く動くクレアは見たこともない。」
そう言っていたら、キリアの後ろから二つの赤い魔法陣が現れて炎が放たれたが、クレトアは高くジャンプしてかわしたらそのまま剣を振り下ろしたが、キリアは後ろに大きく下がった。
「・・・これは新しい発見だ・・・まさかこんなゴミの世界にこんな力を持っている奴がいたとは・・・殺しておくのはもったいない。」
そう口を歪めながら言ったら、キリアの背後から急に何かの影が飛び出して斬撃が飛んできてクレトアの方に来たが、彼は動かずそのまま立っていた。 しかし斬撃は彼の周囲に降ったので当たっては無いが、頬にかすったのか血が滲んで出てきたが彼は気にしなかった。
そして、キリアの後ろから出てきた影が前に立った。
「・・・カルファ・・・また命令違反か・・・。」
ため息交じりでキリアがさっき出てきた影、カルファに言ったが彼女は首を振った。
「いえ、報告に着ただけです。」
そう言ってカルファは膝をつけ言葉を続けた。
「この世界・・・そこにいる四人以外の人間討伐を全て終えました。」
そういった瞬間、四人の表情が一瞬凍った。 カルファは喋り続けた。
「最終計画の準備に取り掛かっていますが、一週間はかかるかと・・・。」
「・・・かまわん。 そのまま計画を進めさせろ。」
「わかりました。」
そう言ってカルファはしゅばっと森の中に消えていってたら、再び風が吹き出した。
「今の話は・・・本当か?」
クレトアは顔を俯いたままで言った。
「・・・そうだとも。 我々はこの世界を完全なる闇に沈めるのが目的だ・・・。」
「では、なぜ全ての人間を殺さなければいけない?」
「・・・人間の心の中にはかならず光と闇がある。 だが、闇が強くてもその心には微かな光がある。 それでは完全なる闇ではない。 逆に言えば完全なる光もない。」
「・・・だが、我々の計画ではそれが大きな邪魔なのだ。 さっき言った闇が強くても微かな光があれば完全なる闇は生まれない。 だからお前達以外の人間を殺した。」
「だが、お前らからは他の人間とは違う強力な力がある。 だから生かしておいて計画が実行する前に捕らえ、心の中の光を闇で侵食し、我々の同類になってもらう。」
キリアはにやりと口を歪めて言った。 やがて、誰も喋らずただ風で木が揺れる音が聞こえる。 そしてまた風は止んだ途端クレトアが口が開いた。
「言いたいことは・・・それだけか?」
「何?」
キリアが言った瞬間だった。 クレトアがいつの間にかキリアの目に前に立ち、固く握った拳をキリアの顔面を殴った。
「!」
流石にキリアも驚いたのか、二・三歩ほど後ろに下がって殴られた頬をさすりながら呆然としていた。
(は・・・早い・・・!)
シオンたちも驚きを隠せなかった。 今の速さはシオンたちには全く見えていなかった。
「・・・ふふふ・・・お前が始めてだ。 我の顔を殴った男は・・・。」
「黙れ。」
クレトアは静かで冷たく荒々しく言ってキリアを睨んだ。 さすがにシオンたちも彼の荒々しい声は聞いたこともないので一瞬ビクッとした。
「私は貴様を今すぐ殺す。 そんなふざけた計画で・・・そんなふざけた理由で、この世界の全て人間を殺されて、守ってやりたい人や家族を失って私の大切な部下を深く傷つき! 深く悲しんだ!」
クレトアは剣の刃をキリアに向けて森が響くぐらい叫んだ。
「死んだものはもう二度と戻ってこられない! 死んだものにはもう二度と会えない! 残された者には悲しみと寂しさが残らない! そして! その心の傷は絶対に消えない!」
クレトアは叫び続けたら、剣の刃から突然キイィィーーンと響く音が鳴りが白く光り始めた。
「だから私は貴様だけを絶対に許さない! 何が何でも・・・この命かえても! 私は貴様を殺す!」
「くっ! 鬱陶しい光だ・・・その剣を消し去ってやる・・・!」
キリアは忌々しく声をあげ、手を横に振ったら黒い魔法陣が三つ現れて、その中から雷がクレトアに目掛けて放たれた。 だが、クレトアはかわすことも無く剣を横に振ったら、空間が傷口のように開き雷がその中に入っていき傷口は何事も無いかのように閉じた。
「なッ!」
キリアは驚いたのか声をあげた。 そして、クレトアは縦に剣をおろしたら、また傷口が開きそこからさっき放たれた三つの雷が出てきた。 キリアは手を前に出して広げたら、黒い魔法陣が現れて雷を防いだ。
「・・・これは・・・空間切断能力、だと・・・? なるほど・・・これは流石に我も予想外だ・・・。」
そう呟いたら手を下ろし後ろから突然、キリアの後ろから亀裂が現れた。
「逃がすと思うな・・・!」
クレトアは真っ先に動こうとしたら、キリアは腕を横に思いっきり振ったら地面から炎が出てきて、クレトアは炎の前で止まった。
「・・・決着はまた後だ・・・そんなにしたかったら、この近くにある我々「シグマ」の拠点地の廃墟の城に来い・・・。」
そう言って、視線だけを後ろに向けてシオンと視線が合った。
「・・・また会おうぞ・・・天使の殺人鬼よ・・・。」
そう言って、後ろに向いて歩き始め、亀裂の中に入っていき亀裂は消えていった・・・。
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