2025/04/12 13:20 |
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2009/12/03 01:31 |
憧れという存在 |
―陸南中等学園 2-B―
その後、僕は教室に戻り濡れた服とズボンを鞄の中に隠して、そのままみんなみたいに机に突っ伏した。 一分がたったのかみんなの声がして僕はわざとゆっくりと体を起こした。
その後はクラス全員が当然のように驚いた。 先生は騒いでるみんなを落ち着きさせて、後に放送があり先生は教室から出た。 みんなはそれぞれ団体になっていて、僕の近くにいる団体の話が聞こえた。
「一体、何だったんだ? あのすごい眠気は?」
「さあ・・・何か強い催眠魔術でもないの?」
「でも、そんなの誰がするのだ? 俺達なんか眠らしても何もとくしねえぞ?」
「そもそも、何の目的でこの学園に催眠魔術なんかするのかしら? 何か意味があるのかな? 桜咲くんは思い浮かぶのある?」
すると、若野さんが僕に話しかけてきた。
「いや・・・僕に聞かれてもね・・・特にこの所物騒だからね。」
僕は普通に言ったが、僕が言っていることは正しい。 思えば、今回のが智東さん達で助かったかも知れない。 闇の死者だったら今頃学園が被害が出ていて、警察とか軍が来て大騒ぎになっていたかもしれない。 数分後、チャイムが鳴ると同時に先生が入り、みんなは席に着いた。
「はい・・・皆さんもしていますが、この学園・・・全員にに強力な催眠魔術がありました。 今、先生達が調査をしています。 特に被害はないけど、皆さんも要注意してくださいね。 面白がって勝手なことはしないように。」
先生は真剣な顔で言った。 この先生はどこか気が抜けているけど、いざ生徒に危ないことがあったら本気になることがある。
「それでは、今朝言った生徒選挙の候補の紙を配るから、最初に名前を書いて2人候補者を書いてください。 その後は先生も行かなきゃいけないので自習をしていてください。」
そう言って先生は紙を配ったら教室から出て行った。 みんなは筆箱からえんぴつやシャーペンを出して、カリカリと書き始めた。 そこで僕は頭の中にふっとあの人たちの事を思い出した。
―昼休み 3階―
「どうしたの、お兄ちゃん。 三年の教室に行って?」
後ろから涼が階段を上りながら話しかけてきた。 その隣には洋もいた。
「うん、生徒会のことで思い出したんだ。 ほら最近、真琴兄さんと琴音姉さんと会ってないだろう? だから、久しぶりに会いに行こうかなって。」
僕が言った人は柊 真琴と琴音。 僕達の一つ年上の双子兄妹で、僕の憧れの人たち。 小学生の低学年の時、近所で母さんと美穂おばさんが仲がよくってその時に知り合った。 二人は成績優秀で、スポーツ万能誰もが憧れる存在。
僕も昔から、二人に憧れていて、兄弟みたい遊んでいたから僕は真琴兄さんと琴音姉さんって呼んでいた。
僕達は三階の廊下について、左を見た。 三年の廊下は思っていた以上に人は少なく静かだった。 ここの三年の問題はかなり難しいっと言われているから大抵の三年生の人は復習とかやっている。
次に右を見たら、生徒会室の前に男女がいた。 男の人は身長が高く少しボサボサの深緑の髪をしてメガネをかけていた。 女の人は僕より少し背が高く長髪でポニーテールをして男の人と同じ深緑の髪をして凛々しい姿をしていた。
「あ、いたいた。」
僕達はその二人に近づいた。
「真琴兄さん、琴音姉さん。」
僕は二人に声をかけたら気づいたのか僕達の方を見た。
「ん? おお瞬か。 それに涼も洋も。 どうしたんだ? なにか分からない問題でもあったのか?」
「ううん、そうじゃないんだ。 最近、兄さん達に会っていないからちょっと来ただけ。」
「そうか、そういえば最近お前達に会っていないからな。 この前は、琴音が瞬た、イテッ!」
急に真琴兄さんは声を上げ肩が大きくはねた。 足を見たら、真琴兄さんの足が琴音姉さんの足に踏まれていた。
「ちょっと・・・真琴? 何を言おうとしたのかしら・・・?」
「いや、何でもないです、スミマセン・・・。」
真琴兄さんは苦笑いしながら謝ったら、琴音姉さんはため息をして足を踏むのをやめた。
「全く・・・所で、瞬。 あなたは体のほうは大丈夫? 怪我とかない?」
「え? うん、大丈夫だけど?」
そう言ったら、琴音姉さんは胸に手をあてほっと息を吐いた。
「そう・・・よかった。 今朝、強い催眠魔術があったから瞬達が心配で・・・様子も見に行きたかったけど・・・。」
と、視線を下に向けてなぜか頬を赤くさせながら言った。 熱でもあるのかな? そう思っていたら、兄さんが話した。
「今、大変なんだ。 先生達は今朝の事で忙しいから。 今度の新しい生徒会長とか決めなきゃあいけないし、半分だけど生徒が書いた候補者を生徒会の人がチェックしないといけないからな・・・。 これが疲れるだよ・・・半分って言ったら227人いるだろう? それを明日の放課後までに出さなきゃいけないし・・・。」
そう言って、真琴兄さんはため息をして肩を抑えながら回した。 確かに227人分のはかなり多い。 疲れるのも無理は無い。
「それだったら、こんな所でいてないでいそいでやった方がいいんじゃない?」
「今はちょっと休憩。みんな疲れた顔をしていたからな・・・。 所で、瞬は生徒会に入る気はある? 瞬は二年の中じゃあトップに立っているし、生徒会長になっても問題ないし。」
真琴兄さんはニコニコ顔をで言った。 たしかに僕は全教科満点はとれるし一位も毎回取っているし僕が選ばれるのは間違いないけど・・・。
「僕は・・・」
と言おうとしたら、急に生徒会室から扉が開いてら、少し目が鋭い女の人が出てきた。 見た目はいかにも厳しいイメージが漂っている。
「会長、そろそろ休憩時間が終わります。」
「うん、わかった。 すぐに行くよ。 ・・・じゃあ、瞬、涼、洋、またな。 たまには俺達の家にも来いよ。 母さんも喜ぶし、琴音も喜ぶから、イッツ!」
「真琴~? 今、何か言わなかった~?」
琴音姉さんは顔を笑いながら、真琴兄さんの横腹の皮膚を抓っている。
「いや、たぶん気のせいだから腹の皮膚を引っ張るなって、イテテテ!」
そう痛々しい声を上げながら、真琴兄さんと琴音姉さんは生徒会室に入っていた。 すると、姉さんがこっちに振り返った。
「それじゃね・・・。」
琴音姉さんは手を振って、僕も振った。 姉さんは微笑みながら、ドアを閉めた。
「相変らずだね・・・あの二人。」
「そうだね・・・。」 「うん・・・。」
二人はなぜか元気の無い声で言った。
「ん? どうしたの?」
「別に何でもない。」 「何でもありません。」
すると、二人は同時に頬を膨らせ、ぷいっと少し怒った顔をした。
「?」
僕はよく分からないまま首を傾げた・・・。
2009/11/22 17:34 |
愛はやがて散ってゆく物 |
―陸南学園 運動場―
クレトアさんが帰った時、さっきまでの灰色の空はやがて、隙間から太陽の光が出てきて雨は止んだ。
「シオン・・・本当によかったの?」
すると、ナルという女性が智東さんに声をかけた。
「あなたは・・・幼い頃からクレトア隊長の事が好きじゃあないのか? 本当に彼の事」
彼女が言いかけると、智東さんは微笑みながら首を横に振った。
「もういいのよ、ナル。 あの人は、私に謝って・・・愛に気づいて・・・あの人が愛してる人と一緒にいて幸せだと思っているから。 そこで、私が彼の邪魔をしたら・・・クレアにも悪いし、なんか相手にも悪いから・・・ね。 私は・・・彼の事はもう諦めるわ。」
彼女は、空を見上げながらそういったら、女性はため息をした。
「・・・そう。 見ないうちに変わったのね、シオン。」
「ナルは・・・一緒にいられないよね?」
智東さんはそういうと、女性は智東さんから視線を逸らした。
「あなたにも、やる事があるのでしょ? だったら、私は無理に止めないわ。」
「ふふ・・・。 やっぱり、その優しさだけは変わってないね。」
彼女は微笑んだら、背中から黒い翼が生えて空を飛んだ。
「また会いましょう、シオン、クオン・・・。」
彼女はフッと笑ったら、どこかへ飛んでいった。 智東さんは彼女を見ていて、見えなくなるまでずっと見ていた。 そして、彼女が見えなくなったらふうっと息を吐いた。
「さて、この状況を知ってしまったら・・・話すしかないわよね、桜咲くん?」
「話して上げるわ。 私達の事・・・すべて・・・。」
と、智東さんは真剣な顔をして言った。 でも・・・
「あのー・・・ちょっといい?」
僕はふぬけた笑いをしながら、右手を上げた。
「何?」
「その話は・・・放課後にしてくれない? 今は学校だし、関係はないけど服ずぶ濡れだし・・・。 へクチュン!」
そう、まだ授業をしてないし、それどころか時間ばかり過ぎていた。 エミがやったのは睡眠魔法だから、当然時間が止まっているわけでもなく今の時刻は10時20分。 もうだいぶ過ぎていた。 これ以上長引いてしまったら、起きたみんながびっくりするし。
おまけに、さっきからずっと雨の中にいたから当然のように服もズボンもずぶ濡れ。
「それもそうね。 このままだと面倒だし、その格好じゃあ風引いちゃうしね。」
「それじゃあ、放課後。 喫茶店の「茶屋」に来てくれる?」
彼女が言った喫茶店「茶屋」というのは、商店街にあるちいさな和風製の喫茶店で、老若男女ともにそこそこの人気がある所だ。 僕も友達と何度も行ったことがある。
「はい、わかりました。」
「それで、服の方はどうするの? そのままでいくの?」
「うーん・・・たしか、保健室に借り用のカッターとかズボンとかあるからたぶん大丈夫だと思う。」
「じゃあ、それどうするの?」
そう彼女は、指を指したのはずぶ濡れになった僕の服。 たしかに、このまま放っておくわけにはいかない。
「水分を絞りとって、こっそり鞄の中に入れとくよ。」
「そう。 じゃあ、また。」
智東さんは後ろに振り返り歩き出した。 すると、クオンさんがぺこりと無言で首を縦に振り、智東さんの後をついて行った。
「はあああ・・・。」
―どうしたのですか?―
「いや・・・ちょっと色々とありすぎて疲れちゃったかな・・・へクチュン!」
とりあえず、僕は玄関前でカッターシャツやズボンを絞って完全に水が出なくなったら、下駄箱の所で上履きに履き替えて保健室に向かった。
―保健室―
僕はくしゃみをしながら、保健室の前まで来て扉の前でノックをして入って行った。
「失礼しまーす・・・て、多木先生いないのかな?」
保健室に入ったら、誰も居なかった。 まあ、誰も居ないほうが安心なんだけど・・・。 僕は扉を閉めてカッターシャツがある所まで歩き、引き出しを開けた。
「えーっと、たしか・・・カッターシャツがここでズボンがここだったかな・・・あったあった。」
僕はカッターシャツとズボンを取り出して、寝室の方に歩いた。
「とりあえず確認・・・うん、だれもいないな。 エミはそこにいて。」
―わかりました。―
エミは頷いたら、僕はカーテンを閉めてカッターのボタンをはずしていく。 カッターシャツは見事にビチャビチャに濡れていた。
「うわー・・・シャツまでびちゃびちゃだ・・・どうしよう・・・これ。」
そうため息をしたら、急に扉の開く音がした。
「たっく・・・不覚だったわ・・・。」
(この声は・・・多木先生? どういうことだ・・・? みんな眠ったはずじゃあないのか?)
「どこかの誰か知らないが強力の睡眠魔法にかかってしまって本当に不覚だったわ・・・ま、このコイツのおかげなんとか助かったけど・・・まったく・・・職員室で急に眠気に襲われて缶コーヒーがこぼれちゃって、白衣が汚れちゃった・・・。ふあ~あ・・・。」
先生はあくびをしたら、ぱさっと音がしてかちゃっと何かを開いた音がした。 たぶんだけど、白衣とか取替えとかしているようだ。
「さてっと、たしか、冷蔵庫に楽しみに取ってあった最後の缶コーヒーがあるからって、あれっ? おかしいな・・・最後の一本は・・・。」
先生はうーんと声をあげながら考えはしてたら。
「そういえば、昨日鉄の奴が来て・・・思い出した! アイツ、勝手にあたしの最後のコーヒーを取っていったんだ!」
と、大きな声で言った。 すると、ダンッ!っと思いっきり足を地面を踏むかのような音がして、肩が跳ねた。
「あ~・・・何で忘れていたのだろうか・・・というか、思い出したら、急にアイツをぶん殴りたくなってきた・・・!」
なにやら、怨念をこめて恐ろしい事を言っている先生。 先生が生徒を殴っちゃいけないですよ先生。 そういえば・・・さっき先生は鉄って言ってたけど森本の事かな? でも、森本と多木先生の仲なんて聞いたことなんてないし、森本も保健室に行くなんて見たことも無い。 そんなこと思っていたら先生のため息が聞こえた。
「しかたない・・・町に行って缶コーヒーを買いに行こう。 今度会ったら、絶対にぶん殴ってやる・・・私の恨みの恐ろしさを思い知らせてやる・・・フフフフ・・・フフフフ・・・!」
多木先生は不気味で恨みをこめた笑い声をして、パキパキとなんとも不吉な音を立てながら保健室から出て行き、足音が遠くなって行った。 僕はというと、先生のあまりにも恐ろしかったので、顔が真っ青になっていてその場から動けなかった。 すると、エミが話しかけてきた。
―中々、恐ろしい人ですね。 顔がおぞましいことになっていました。 彼女は人間なのですか?―
「・・・そんな事を言ったら、怒ると思うから言わない方がいいよ・・・。」
僕は重たいため息をして、急いで着替えを済ませて寝室のカーテンを開いて保健室から出て、教室に戻った・・・。
2009/11/18 23:37 |
ある灰色の空の日(後編2) |
―陸南学園 運動場―
「君は何者だ。 何故、私を狙った?」
雨の降る静寂の中、クレトアさんはレナウドさんの前にナイフを持っている女性に言ったが、何も答えず顔を下に向けた。
「・・・けるな・・・。」
すると、彼女の口が動いたのが見えた。 雨の音で声までは聞こえなかったけど。
「・・・ふざけるなあああぁぁぁーーーーー!!!」
突然、彼女は咆哮し、濡れた地面を蹴り物凄い速さでクレトアさんに突っ込んでいった。 クレトアさんは咄嗟に白い拳銃を取り出し、連射したが、彼女は止まることもなく弾丸を綺麗に避けて右手に持っているナイフを投げた。
「くっ!」
すると、突如クレトアさんの前から白い魔法陣が現れて、魔法陣からに何か出てきて彼はそれを手に取り、それを抜いた。 それは刃が真っ二つの剣であった。 彼はそれをなぎ払いナイフにあたり、こっちに回転にしながら来て、智東さんのすこし前に刺さった。 すると、彼女はハッとした顔をして地面に刺さったナイフを抜いて観察すかのようにナイフを見た。
「このナイフは・・・いや、そんなはずは・・・だって・・・。」
彼女はなにかブツブツと言い始めたら、カキーンとなにかぶつかり合った音がしてそっちを見たら、再びカキーンと音がした。 クレトアさんの剣と女性のナイフがぶつかり合っていた。
「はああぁぁッ!」
クレトアさんは体を素早く回転し、剣を払ったら女性の腹を切った。 だが次の瞬間、女性の体が歪みながら消えていった。
「甘いッ!」
と同時に、彼の背後から女性が現れて、両手に持っていたナイフを振り下ろしたが、いつの間にかクレトアさんはその場から消えていて、空振りをした。
「何ッ!」
彼女は驚いて顔を上げた瞬間、バーンと何処からか銃声がした同時に女性の頬になにかかすったかのを見えた。 そして、彼女の頬から血の一滴がたれて濡れた地面に落ちた。 だが、彼女はそんなことを気にしてはおらず上空の方に睨みつけていた。 僕は彼女が睨んでる方を見たら、いつの間にかクレトアさんが上空に浮いていて、右手に白い拳銃、左手に剣を持っていて、右手に持っている白い拳銃が彼女に向けられていた。
「うおおおおッ!!!」
彼女は再び咆哮したら、突然背中から黒い翼が生えてきて、その翼を羽ばたきながら勢いよくクレトアさんに突っ込んでいった。 クレトアさんは白い拳銃をマントの中にしまい、剣を右手に持ち替えて剣を勢いよく振り下ろしたら、斬撃を女性に目掛けて放った。 しかし、彼女は体をくるりと回転し、斬撃をかわして止まることも無く彼に突っ込んでいき、クレトアさんの剣と女性のナイフが激突し、押し合った。
「誰だ、貴様は!? 何故、私を狙う!?」
「黙れッ! 貴様は・・・貴様だけは許さんぞ!!」
すると、彼女は急に後ろに下がったら、クレトアさんがバランスを崩した隙に、何処から出ているのかナイフを数十本を投げた。 クレトアさんは咄嗟にかわし、剣を降ったら斬撃を放ったがすでにそこには居なくて上の方に飛んでいた。 斬撃は屋上のフェンス(新品)に当たり、真っ二つになった。 あれが三階の教室にいる三年生に当たったら、想像するだけで恐ろしいことになっていたかもしれない。
彼女は再び、クレトアさんに突っ込んでいき、ナイフを投げた。 クレトアさんはナイフをかわした。 だが、彼が投げたナイフを見ていたらいつの間にか女性はクレトアさんの後ろにいて、ナイフを取った。 クレトアさんは、マントに手を突っ込みで、女性はナイフをくるりと回転させた。 お互いの距離はそんなに離れてはおらず、見た状況は女性のナイフの方が早いと僕は思っている。
「あの動き・・・やっぱり彼女は・・・!?」
そしたら、急に智東さんが立ち上がり、
「やめて、クレア! ナル!」
彼女が叫ぶかのように言ったら、クレトアさんと女性はピタッと止まった。 クレトアさんはマントから取り出した白い拳銃を女性の首に、女性のナイフはクレトアさんの首に当たっていた。 たぶん、彼女が声をあげなかったら、どちらか・・・いや、今の状態では、二人とも首から血が出て死んでいたかもしれない。
「き・・・君は・・・ナルシファ・・・なのか・・・?」
「・・・。」
すると、女性はゆっくりと腕を下ろし、彼から離れて地面に降下していき、クレトアさんも白い拳銃をしまい降下して地面についた。
「そうです・・・お久しぶりです、クレトア隊長・・・。」
「どういうことだ・・・? 君はあの時、たしか死んだはずでは?」
「ええ、たしかに私は死にました。 でも、私は何故だか分からないけどこの世に戻ってきたのです。 体は違いますけどね。」
「今の私の体は「空の人形」という名の体・・・もとい人形の体です。」
そう言ったら、彼女は右袖を短くした。 そしたら、三人は驚きの表情をした。 彼女の腕は白くて綺麗な肌をしているが、黒くて細い線があって、人形の腕そのものだった。
「では・・・その翼は?」
「これは、元々この人形の能力であって私自身の能力ではありません。 さっきの残像もそうです。 ついでにさっきのかすり傷のものは自動的に治っていく能力もあります。」
と、言いながら翼が体の中に入っていき、さっき銃弾でかすり傷もみるみる治っていき、傷口が完全にふさがった。 そして、しばらくの沈黙が続きクレトアさんが口を開いた。
「では・・・質問を変える。 何故私を殺そうとした?」
彼がそう言ったら、彼女は鋭くクレトアさんを睨んだ。 その目は怒りや殺意を僕は感じている。
「本気でわからないの・・・?」
彼女は低い声で言い、腕をプルプルと震えていた。
「私が怒ったのは・・・隊長・・・いえ、アンタが私の親友でもあるシオン・フィーグ・アルファシアを裏切ったからよ!!」
「アンタ、分かっているの?! アンタは昔から愛は知らないのは知っていたけど、よりによってシオンと違う女性と結婚して・・・私がどれだけ怒るの分かっている!?」
彼女の怒りが僕の体全体にピリピリと伝わってくるのがわかる。 クレトアさんは彼女の顔を見ているが、何も言わなかった。
「シオンはアンタのことが好きだった。 私はシオンが幸せそうな顔が好きだった! 二人が笑っている姿が私は好きだった! 私はシオンとアンタとの結婚して欲しかった! 幸せになってほしかった! 心のそこから願っていた! それを・・・それを裏切って・・・彼女を悲しましてまで・・・アンタが他の女と結婚したのが私は許すわけにはいかない!」
彼女は再び、ナイフを両手に持って構えた。 しかし、クレトアさんは一歩も動かず持っている剣が白く光り、やがて消えた。 さすがに、これには彼女も驚きの表情だった。
「・・・シオン、話の続きなのだが・・・。」
クレトアさんは智東さんの方に振り向いたら、智東さんはビクッと肩がはねて、顔を下に向け震え始めた。
「私は愛というものに気づき、彼女と結婚した。 しかし・・・それと同時に。」
クレトアさんは言葉を切って、智東さんの方に歩き始めた。 そして、彼の口が開いた。
「私は中に君への罪悪感が生まれた・・・。」
その瞬間、彼女は「えっ?」と呟き、顔を上げると同時に、肩の震えが治まった。
「私は・・・愛に気づいた時、あの時・・・君が言った言葉をようやく理解ができた。 君が私のことを愛しているのを・・・理解した。 そして、私は君を傷つけてしまったことに気づき、私の中に罪悪感が生まれた・・・。 私は・・・君に会いたかった、直接会って謝りたかった。 ・・・だけど君達が何処の世界に行ったのか私は分からなかった。」
クレトアさんは自分の犯してしまった罪をいいながら歩き、そして彼は智東さんの前に立ち止まった。
「だが・・・私はようやく、君に会えた。」
「シオン・・・いや、シオン・フィーグ・アルファシア副隊長・・・君の愛を裏切ってしまって、心に深い傷を負ってしまって・・・本当に申し訳が無い・・・。カチア王国の元・第三隊特殊戦闘部隊「エグリス」の隊長として君に謝罪する。」
そう言いながら彼は、彼女の前で頭を下げた。 智東さんは顔を下に向いて、両手を胸に押し付けて何も言わなかった。 するとここで、雨が弱くなってきているのに気づいた。 今日の天気は九時以降は雨が激しく振るって言ってたのに。
「隊長・・・頭を下げないでください・・・。」
すると、彼女から今でも泣きそうな声で言い、そして涙の雫がポタポタと次々と零れていた。
「そんなこと・・・されても・・・グスッ・・・私は、嬉しくはありません・・・。 そんなことをやっても・・・グスッ・・・あなたが私のそばに・・・いるわけでも・・・ないの・・・だ、から・・・。」
「だけど・・・私の・・・こ、とに・・・気づいてもらった・・・だけ、で、も・・・私は、嬉しいから・・・ヒクッ・・・許して、あげる・・・から、だから・・・ヒクッ・・・頭を、下げないでくださいよ・・・バカァ・・・。」
彼女は子供みたいに言って、止まらない涙を拭いていった。 そして、クレトアさんが頭を上げて智東さんの側にいき、そっと抱きしめた。 すると、ここで雨がやみ、雲の隙間から太陽の光が出てきて、その光は二人がいるところにやさしく包み込んだ。
「・・・寂しい思いをさせて・・・本当にすまない・・・シオン・・・。」
気のせいだろうか。 今一瞬・・・本当に一瞬だったが、クレトアさんが涙を流したのが見えた。
「クオンも・・・寂しい思いをさせて・・・すまない。」
クレトアさんは顔を上げてクオンさんに言ったら、彼女はゆっくりと首を横に振り微笑んだ。 すると、レナウドさんがクレトアさんに近づいてきた。
「兄さん、そろそろ戻らないとカナさんも心配するし、レンドウさんも怒っていると思うよ?」
「そうだな。」
クレトアさんは智東さんとゆっくりと離れていき後ろに向いてたら、突如、空間に傷口が現れた。 レナウドさんはなんのためらうこともなく、その中に走って入っていった。 クレトアさんも歩き始めたのだが、傷口の前に急に立ち止り、ゆっくりと後ろに向いた。
「シオン・・・つらい思いをさせてしまって本当にすまない・・・。」
「それと・・・もうこれ以上、戦わないでくれ。 私は、君達に戦って欲しくないのだ。 君達は幸せになってほしい。 だから」
クレトアさんが言いかけると、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「悪いですけど、それは聞けません。 私は私で・・・この世界が好きなのです。 この世界や助けてくれた人たちを守りたいのです。 あなたが世界のために戦っているのに、私達は幸せに暮らしている・・・私はそんなの嫌だ。 だから・・・たとえクレア・・・隊長命令でも・・・私は、戦います。」
智東さんは先まで泣いていた顔は跡形もなく、きっちりとした顔できっぱりといった。 すると、彼は苦笑いをしながら、少しため息をした。
「・・・そうか、わかった。 君がそういうのならば私はもう何も言わない。 ただ・・・縁起悪いけど・・・死なないでくれ。 私にとって、仲間が死ぬのは・・・耐えられないから。」
「私は・・・死にません。 絶対に。」
彼女は微笑んで強く言い切った。 そして彼は口を緩み笑った。
「それとシオン。」
彼は体を前を向き歩きながら。
「ありがとう・・・。 こんな私を・・・許してくれて。 本当に、ありがとう・・・。」
と、嬉しいようで悲しいような声で智東さんに言って、空間の傷口に入っていき,やがて傷口は完全にふさがった・・・。
2009/11/12 00:22 |
ある灰色の空の日(後編) |
―陸南学園 運動場―
静寂すぎた運動場に雨がゆっくりと降る中、智東さんはクレトアさんが現れてからずっと驚きの表情をしながら見ていて、口をパクパクしていた。
「な・・・ん・・・で・・・?」
彼女が呟いた瞬間、から涙が出てきた。 そしたら、クレトアさんは智東さんの方に歩き始めた。
「なんで・・・あなたが・・・生きているの、クレア隊長?」
隊長? 生きている? どういうこと?っとそう思った瞬間。 パチーンっと響いた音がして、一瞬慌ててしまった。 突然、クレトアさんが智東さんの頬をはたいていた。
「・・・え?」
智東さんは何故はたかれたのが、よくわからない顔をしながら、はたかれた頬をさすった。
「・・・あの時・・・言わなかったか、シオン?」
クレトアさんは表情を変えずに言ったが、彼が相当怒っているのが肌に伝わってくるのがわかる。
「殴ったことは謝罪する。 しかし、あの時・・・言ったはずだったよね? もう・・・戦ってはいけないと・・・。 それなのに・・・君は戦っている。 しかも、戦っている相手が・・・私の味方でもある。」
彼は僕の方に顔を向けて、再び智東さんに向きなおした。
「それなのに・・・どうして戦っているのだ? ・・・君も知っているのではないのか、クオン。」
そう言ったら僕は途中、えっ?っと思った。 この場所には僕とエミ、智東さんやクレトアさんしかいないのに他にだれかいるの?
「そこにいるのは分かっている。 出てきなさい。」
クレトアさんは顔を校門の方に向き言った。 そしたら、門柱から女の子がゆっくりと出てきた。 そして僕はその女の子を見て驚いた。
「! 智東さんが・・・二人?!」
校門に立っている女の子は智東さんと瓜二つだった。 白銀の髪や顔や体型もすべて同じだった。
「クオン・・・君も知っていたのではないのか? シオンが戦っていたことを・・・。」
そのクオンっていう女の子は何も言えなかった。 クレトアさんは再び智東さんに顔を向けた。
「なんで・・・なんでたたかっているさ・・・!」
クレトアさんは怒った表情で、手を握り締めていた。
「私はあの時、君達に言った、「もう、戦わなくていい。 だから、幸せになってくれ。」って。 それなのに・・・どうして、人を殺そうとしている!」
クレトアさんの怒声が辺りに響き、彼女の肩が震いだした
「わ・・・わた・・・しは・・・。」
彼女は両手をガタガタと震えた肩を抑えながら、壊れた機械のように喋った。 そしてゆっくりとその場に膝をついた。
「私が話します。 隊長。」
すると突然、クオンという女の子が口を開き僕とクレトアさんは彼女の方に向いた。 そして、数秒後、彼女の口が開いた。
「私達は・・・あの時、隊長と別れたときこの世界に飛ばされました。」
彼女は暗くて・・・そして、どこか寂しいそうな声で言った。 そんな感じがクレトアさんは伝わったのか視線を下に向けた。
「その時の私達は・・・二月の雨の中、道路で倒れていて見知らぬ老人たちに助けてもらいました。」
「とても幸せでした。 おばあさんはやさしいし、おじいさんは素直じゃないけどいい人です。 だけど・・・やっぱり私達はみんなと一緒にいたい。 また、みんなに会いたい・・・そう思えたら急に涙が出てくるの・・・。」
それはそうだろう。 僕にはわからないけど、この二人は全く知らない世界に飛ばされて、仲間や知人もいない・・・たった二人だけでは、寂しい気持ちなるのも当然だ。
彼女が喋っている中、僕は一瞬クレトアさんに視線を向けた。 彼は顔を下に向けていてただ、黙って彼女の話を聞いていた。
「その二ヵ月後、私達が外出の時、ある黒いフードをかぶった男に出会いました・・・。」
彼女がそう言ったら、クレトアさんはピクッと体が動き、視線をクオンさんに戻した。
「その男は「君達の大切な人を生き返らせてやろう。 ただし、この男を殺したら・・・。」と言っていました。」
「私達は隊長の言葉を忘れてはいませんでした。 でも、やっぱりみんなと一緒にいたい・・・その思いが強かったのです。 だから・・・姉さんは・・・。」
「そうか・・・事情はわかったが、その男とは?」
彼がそう言ったら、クオンさんは黙って首を横にふった。
「その・・・わかりません。 顔はフードで隠されていて見なかったのです。」
「そうか・・・。」
「所で・・・なんで隊長は生きているのですか? 隊長はあの時・・・。」
「ああ・・・それは・・・。」
彼が言おうとしたら、突然クレトアさんの目の前の空間から白い大きな円が現れた。 そしたら、さっきまでそばにいたエミがいつの間にか僕の前に出て、戦闘態勢に入ったと同時に、円の中から人がと出てきた。 その人は僕と同じ年ぐらいの子で、クレトアさんと同様の全身白い服を着ていた。
「いたいた、こんな所にいたの!」
彼はふうーと息を吐いたら、小走りでクレトアさんの所に行ったら、あの円が消えていった。
「もう、びっくりしたよ! 会議の途中、顔色を変えて急に飛び出して!」
彼がそう言ったら、クレトアさんはハハッと苦笑いをした。 会議の途中ってことは彼も光の裁判官(ライト・ジャッジ)の仲間なのかな? そう思ったら、視界に驚きの表情と絶句した智東さんが見えた。 僕はクオンさんのほうも見たら、彼女も智東さんと同じ表情をしていた。
「え・・・な・・・何で・・・。」
智東さんがなにかブツブツと言いながら口を動かしている。
「何で・・・何でそいつが・・・生きているの・・・?」
彼女はゆっくりと立ち上がり、肩を震わせながらさっき円から出てきた子を指した。
「ねえ・・・クレア・・・。これって一体、どうなっているの? どうして・・・どうして、国の仇でもあるテロリスト「シグマ」のリーダーが・・・生きているのですかッ!!」
彼女は少年に指を指しながら怒声した。 今の彼女の言葉は背筋が凍るほど激しい殺意と怨念を僕は感じた。 しかし、彼は今の言葉を理解できていないかのように首を傾げた。 すると、ここでクレトアさんが口を開いた。
「・・・昔話したことあるだろう? 私には弟がいたっと。」
彼の一言で、彼女たちはハッと息を呑んだ。
「ま・・・まさか・・・。」
「そ・・・そんな・・・ありえないわ・・・。」
彼女たちは気づいたかのように声を震わせながら後ろに一歩、下がった。
「そう・・・彼が・・・かつて、私達の国を滅ぼした最大の敵でもあるテロリスト「シグマ」のリーダー・・・キリアでもある・・・だけど、そのキリアという奴は死んで本当の彼を取り戻した・・・レナウド・レード・・・正真正銘の私の弟だ。」
彼はそう言ったら、彼女達はまた一歩下がり信じれない顔をした。
「どうもこんにちは、僕は光の裁判官(ライト・ジャッジ)の第八戦闘隊「カルメス」の隊長を務めている、レナウド・レードです。」
と、彼はそう言ってぺこりと礼儀よく頭を下げた。 僕は思わず、ちいさく首を縦に振ったが、彼女たちはまだ、信じれない顔をしていて、何も言わなかった。
「あっ、そうだ、こんな事をしている暇じゃない。 兄さん、早く会議室に戻らないと! カナさん心配していましたよ。」
と、彼はクレトアさんの腕を引っ張り始めた。 すると突然、智東さんが口を開いた。
「ちょっと待って、カナさんって?」
そう智東さんが言ったら、口を開いたのはクレトアさんではなく、弟のレナウドさんだった。
「カナさんは光の裁判官の第六戦闘隊「キャノラ」の隊長で。」
そこで彼は言葉を切って。
「兄さんの奥さんでもある人だよ。」
そうレナウドさんは言ったら、彼女たちの表情が固まった。 そして、静寂が生まれた。 ポツポツと降っている雨の音しかしなくなった静寂が、数秒、数十秒、数百秒がたった。
「な・・・んでよ・・・。」
そんな静寂の中、智東さんの声がして彼女の方を見たら、いつの間にか彼女は泣いていた。 目に一杯の涙と雨の雫と共にたれていた。
「クレア・・・私があの時言った言葉・・・覚えてないの?」
彼女の涙は止まらずボロボロとこぼれながら言った。 しかし、クレトアさんは何も言わなかった。 彼はただ彼女と視線を合わせることも無く何も言わなかった。
「・・・何とか言ってみてよ、隊長!!」
「あの時、私はあなたに言った! あなたが好きだから・・・死んでも一緒にいたいって! それなのに・・・なんで・・・なんで、私の愛を裏切って他の女の人と結婚しているの!? 答えてよ! クレア!」
智東さんは肩を震えながらも辺りに響く声で彼に言った。 しかし、彼は振り向こうともしなかった。
「すまない、シオン・・・。 私には・・・愛とか好意とかそんなのよく分からなかった。 君が本気で私の事が好きであっても、私には分からなかった。 理解できなかった。 だけど、彼女と出会ってから一緒にいたら、私は愛というものに気づいた。 そして・・・私は彼女と結婚した。 そして・・・それと同時に」
と何かを言おうとしたら、どこからかシュッと鋭い音がして咄嗟に動いたのはレナウドさん。 彼は手を前に出したら深紅色の魔法陣が現れ、何かが魔法陣を通りぬけたら燃えカスになっていき魔法陣が消えたらレナウドさんは腕を下ろした。
「何者だ!?」
レナウドさんの声が辺りに響いた。 その数秒後、木陰から人が出てきた。 その人は黒いゴスロリ服をきた女性で、手にはナイフが握っていた。 その女性は、レナウドさんを睨んでいた。 いや、違う。 女性が睨んでいるのは彼の後ろ、クレトアさんだった。
「・・・。」
女性はただ、クレトアさんを睨み続けた。 数秒、数十秒、何秒過ぎたのか分からないぐらい、女性はクレトアさんを睨んだ。 そして、雨の量も増えていき、勢いも強くなっていった・・・。
2009/11/04 23:58 |
ある灰色の空の日(中編) |
―陸南学園 運動場―
「・・・。」
学校の中も静かだったけど、外の方もかなりしずか・・・いや静寂だった。 そんな中、僕とエミは目の前に敵・・・仮面の女をを睨んでいた。
「堂々と登場ですか・・・。 平日なんだから来ないで欲しかったよ・・・。」
と、僕はため息と愚痴をこぼした。 久々の学校なのだから、と言いたいがそれ所でもないから心にしまった。
―お下がりください。―
エミはそう言いながら僕の目の前に立ち、人化した。 そして、両手から手のひらから黄緑に光った球が現れた。
「エミ・・・。」
―この方の狙いはおそらくあなたでしょう。 だから、あなたは下がってここは私が。―
「いや・・・ここはぼくがやるよ。」
―しかし。―
彼女が言おうしたら、僕は彼女の肩にポンと手を置いた。 しかし、僕は彼女とは目を合わせていない。 ただ、まっすぐ見ていた。
「彼女の狙いが僕なら、なおさら相手をしないといけないだろう? それに僕が逃げて、君が戦っているのは自分にとって嫌だしね。」
そう言ったら、彼女が開こうとしたら。
「たとえ・・・契約魔としても・・・彼女が僕を狙っているのなら・・・僕が相手をする。 もし、僕が逃げていて君が彼女に敗れて傷ついたら・・・それじゃあ、君がただ傷ついただけになってしまう。 僕はそんなの・・・見たくも無い。」
そう言って、エミはしばらく黙っていてその後、黄緑の光の球が消えた。
ー・・・分かりました。 ですが、あなたが危険になったら、私は何が何でもお守りします。―
そう言って彼女は僕に道を譲るように下がった。 僕はエミにゆっくりと頷いたら前に数歩、歩いた。
「・・・。」
彼女はただ無言でその場から動かなかった。 ただし、彼女からの殺意はこの前とは比べ物にもならないほどぴりぴりしているのが分かる。
「・・・その様子だと、決着をつけに来た様子だね。」
僕は歩くのをやめ立ち止まった。 これだけ肌にぴりぴりしていたら、たぶん彼女は本気で来るだろうと思っている。 そしたら、彼女は持っていた剣を一回振って、戦闘体勢になった。
「いいよ。 今日で決着をつけよう。 僕はこの世界を守る為にも・・・ここで倒れちゃあはいかないからね!」
「召喚(カオス)!」
言った瞬間、後ろから緑色の魔法陣が現れた。
「ピイイイイィィィィーーー!!」
そこから僕の召喚獣、カゲロウが出てきたら咆哮した。
「カゲロウ! 一体化!」
僕はフィードを上に向けて、カゲロウはフィードに取り込まれるかのようにフィードと一体化した。 そしたら、刀盤の所に羽が生えて、刀背はギザギザに変化した。
「行くぞ!」
そう言って、僕が前に動いたと同時に仮面の女も前に動き出した、その瞬間。 彼女はその場から急に消えた。
「なっ!」
僕は止まろうとした瞬間、急に後頭部から蹴りが入って、脳が揺れた。
「ぐっ! このっ!」
僕は倒れるのをぐっと堪えて、体を後ろにむきフィードを思いっきり横振りをしたが、彼女はそれをしゃがんでかわした。
「何ッ! ぐおっ!」
その隙に、彼女の剣を反対に向き刀首を腹にぶつけた。 後ろに数歩下がったら、今度はあごを殴られ、腹から手が離れたら、彼女は一回転をして彼女の鉄拳が腹を直撃し、吹っ飛ばされて壁に激突して、その場に倒れた。
―!―
「来るな、エミ!」
エミが動こうとしたら、僕は声をあげた。
―ですが!―
エミが言おうとしたら、僕はゆっくりと立ち上り、さっきの衝撃で離してしまったフィードを握り締めた。
「僕なら・・・まだ、大丈夫だ。 まだ戦えるから・・・来なくていい・・・。」
とは言っても、脳を蹴られて頭はふらふらするし今でも嘔吐してもおかしくは無い状態だ。 そう思っていたら、彼女が動き出して、僕の目の前に現れて、僕は咄嗟に剣を振ったがなかなか剣に当たらない。 それどころかさっきの衝撃と頭を蹴られたせいかふらふらし始めて、なかなか頭が働かない。
(駄目だ・・・は・・・速いすぎて付いていけない・・・! これが・・・。)
そう思ったらふっと気づいた。
(いや、もし本気だったら、今頃は死んでもおかしくは無いと思う・・・。)
そう。 彼女の速さなら、剣で僕の心臓を刺したら一瞬で終わるのに、なぜ彼女はさっさと殺さないんだろうか?そんな疑問が浮んだら、前に彼女の蹴りが見えて慌ててかわしたが、急に彼女が消えて背中に蹴りが入って、思わず倒れそうだったけど何とかこらえた。
(ぐっ・・・! こっちも速く反撃しないと・・・! だけど・・・あの仮面の女の速さにどうついていけば・・・。)
そう思ったらふっと彼女の足が光っているのに気づいた。 そして、そこから頭をフル回転させながら考えた。
(足・・・か。 よし、一か八かやってみよう。)
僕は頷いたら、自分の足に集中し始めた。 そうしていたら、彼女は剣を振ろうとしたら僕はそれをかわして彼女の懐に入った。
「・・・!」
慌てた彼女は咄嗟に距離をとったが、すぐに追いついた。 足に集中したら、彼女と同じ速さになっていた。 彼女は驚いたのか、剣を振ったが僕はそれをかわし、蹴りが脇腹に入った。
(す・・・すごい・・・! 足が軽いように感じる!)
「よし、これなら!」
そう言ったら、僕は後ろに下がって空中に飛んで、刀身全体に風が集まってきて螺旋状態になってきて。
「スパイラル・シュート!」
それを放った。 しかし、その風は彼女に当たらず、ギリギリ彼女の二・三歩離れた所・・・周りには何も無い所の地面に当たって辺りに砂埃が立った。 だけど、これが僕の狙いだった。 砂埃なら僕の姿は見えないし、彼女がいた場所ならわかっていた。 僕は砂埃の中に入っていき、彼女の目の前に降りた。 そしたら、彼女も気づいたのか慌てているのが分かった。
「!」
「もらった!」
剣を振り上げたら、彼女は急いで後ろに下がったがその途中、カキンっと何かに当たった。 上を見たら、彼女がつけていた仮面が勢いよく回転しながら上空に上がっていき、そのまま落下するのが見えた。 そして、徐々に砂埃が晴れてきた。 そして、その先には・・・
「! き・・・君は・・・。」
僕はその先を見た瞬間、驚愕した。 仮面の女の仮面が飛ばされて僕は彼女の顔を見た。 その顔は僕がよく知っているこの顔だ。 特に目立っている・・・白銀色をした髪、あれは間違いなく・・・。
「・・・智東・・・さん・・・?」
「・・・ばれちゃったわ・・・ね・・・。」
と、彼女はため息混じりで言った。 その時、僕の頭がグルグルし始めた。 どうして・・・。
「どうして・・・智東さんが・・・僕を殺そうとしているの・・・?」
そう言ったら、智東さんは顔を下に向いた。 それからしばらく、何も喋らなかった。 ただただ空がゴロゴロとなっていて、周りには無音、静寂が続けられ、そしたら、彼女の口が開いた。
「ごめんね・・・桜咲くん・・・。 本当は私、あなたを殺したくないの・・・。」
僕はその言葉を聞いてなぜか彼女が悲しいそう・・・いや、本当はこんな事なんかしたくない、悲しいという気持ちが僕に伝わった。
「でも・・・本当にごめんね・・・桜咲くん・・・私達のために・・・ここで、死んで・・・。」
突然、冷たい声で言われて「え?」と思った瞬間、智東さんがいた場所から一瞬消えて僕の目の前に現れら瞬間、彼女は急にしゃがんで足払いをした。
「うわッ!」
僕は見事にその場で仰向けに倒れてしまった。 すぐに起きようとしたら、目の前には智東さんが両手で剣を握り締めて僕を刺そうとした。 僕は慌ててかわそうとした瞬間。
「そこまでだ! シオン!」
何処からか聞き覚えのある男の声が響いた瞬間、彼女は驚きの表情をしながら手を止めた。 そして、ゆっくりと首を声がした方を見た。 そしたら、彼女は剣を持っていた手がゆっくりと離していき剣を落とした。 僕も声がした方を見た。 居たのは、体全体白い服を来た人が空中に浮んでこっちを睨むかのように見ていた。 その人は僕の顔にそっくりの人物、クレトア・レードだった。
「そ・・・んな・・・あ・・・あなたは・・・。」
一方の智東さんはなぜか驚きを隠せない状態で口をパクパクしていた。 そしてクレトアさんはゆっくりと降りてきてる途中、頬になにかの液体みたいなのが当たった。 空をみたら、雨がゆっくりとぽつぽつ音を立てながら降り始めてきた・・・。